アンテナ
No.68
2007.12.13
熊本大学教職員組合
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熊大教職員の生の声シリーズ №3
-熊本大学「全学の国際化推進」方針案を評す-
学内民主主義と学問的見識の欠如、
真のリーダーシップの喪失が熊大を危機に…!!

 「全学の国際化推進の仕組みについて(案)」について、組合に文系の教員の方から意見をいただきましたので、紹介します。
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黙過できない!
 教育学部教授会では11月28日(水)の教授会で今、学内で進められている「全学の国際化推進」に関わる“怪文書”、いや“怪政策文書”の内容が紹介された。(みなさんも入手可能な文書のはずです。)
 阪口理事(国際交流担当)らによる「文書」は、こう述べます。
 欧米の先進諸国が注目するアジアの教育ハブ(拠点)といえば、それは日本ではなく、一に中国、二にインド、三に東南アジア諸国だ。
 その原因の1つは日本の大学が「情報発信」が足らず、国際的な人材の流動性・開放性を体現していないからだ。
 そこで熊本大学の「国際化戦略」の基本ポリシーを“アジアのハブ大学へ”と定める。その実現のメドは「例えば10年」
—という。
 そこで「二本柱のポリシー」が提示され、教育、研究、国際貢献、教職員、環境整備の各項目ごとに目標が提示されています。
 一読して強く感じるのは、この「文書」の内容は、決して国際交流部門が、外部(海外)との関わりで活動が活発化していく、ということに止まるのではなく、私たち熊大の日常に大きな影響を及ぼす重大な内容を孕んだものであることです。
 曰く、“大学院教育の原則英語化”“英語の公用語化”“世界大学ランキング200位以内”“秋季入学の実施”“留学生センターの改組”“教職員採用での英語要件化”……。
 しかも、それを来年(2008年)4月から実施に移そう、というのです。黙過できるでしょうか?特に今回組織改変を蒙り、その仕事内容も配置も定かでない留学生センター教員をはじめとする国際交流関係部署の人たちの不安は測り知れないように思います。

まっとうな「学問の府」=熊本大学の発展のための「計画」なのか?
(1)内容面で第一に気づくことは、本学の研究・教育の「国際化」推進のための「計画」として実に杜撰だということです。何年計画なのかわからないし(2頁に「例えば『10 年』を目途として…」という文があるのみ!)、海外から来る人員の規模等の目標数もどこにもありません。それにもかかわらず、来年4月には留学生センターを改組が実施されることになっています。“杜撰”というほかないのではないでしょうか。
(2)第2は、極端な“国際化イコール英語化”の主張の問題性です。「大学院教育の原則英語化」や「英語の第二公用語化」などにあらわれているものですが、付属文書の図には“全面英語化”と書かれています。
 私のような文系の者からすれば驚きを禁じ得ません。英語を専門とする分野を別にすれば、中国教育、ドイツ文学、イタリア史、国文学、日本史などを教える教員がなぜ大学院で英語で授業する必要があるのでしょう。私の専門からすれば、(大学院のばあい、多くの授業がゼミナール形式ですが)なぜ英語化しないといけないのか分かりませんし、私にはできません。
 私の分野で大学院の授業を英語化したらどうなるでしょう。まず私が授業(ゼミナール)の始めに英語でレクチャーします。しかし、目の前にある論文は和文であることも多く、そして大学院生も英語で討論することになるのでしょう。ここまで考えただけで馬鹿げているのですが、院生は学部のうちにテクニカル・タームも含め、英語でゼミの内容にかかわる意見表出できなければなりません。そうすると学部教育も大幅に(大学院教育をにらんで)改変しなくてはなりません。——もうおわかりでしょう。この文書の提案は“荒唐無稽”なのです。
 外国人留学生が増えていることも分かります。専門分野によれば、——例えば「万能細胞」の研究のように、研究対象が万国共通のヒトの人体で、そして英語による文献・データが普遍化している分野があることも否定しません。ですから特定分野の専門分野で「英語による学位課程」などを造ることを頭から否定するつもりでもありません。しかし、それが、「大学院教育の原則英語化」「全面英語化」「英語を第二の公用語に」とくれば、それは話が違います。
 この問題には、少なくとも「文系」(——日本の大学生の7割以上を収容している)についての、ほとんど無知が存在しているといわざるを得ません。理系の中とて、学問の発展の必要性に照らしてほんとうに「原則英語化」する必要があるのでしょうか。この文書には、文系では「英語教育」と「eラーニング」関係だけが登場しますが、それをもって「大学院教育の原則英語化」などと断ずるところに、この文書(計画)の学問的無知と無責任さを感じずにはいられません。
 それなりに高い給料をもらっている理事がこのような杜撰な計画を作るということに怒りすら覚えます。

学内意思決定には「学内民主主義」を!
 この文書には「4.検討体制」(10頁)があり、そこには「(2)スケジュール」があります。それを見る限り、来年4月にはこの計画が実施に移され、「国際交流推進機構」なるものができ、留学生センターを改組した「国際化推進センター」が業務を開始するようです。“横暴”“拙速”というそしりは免れないでしょう。
 私がこの「計画」を知ったのは、11月20日頃です。このスケジュールによると私たちの意見を聴くのは、12月13日の部局長等連絡調整会議で、ということになっています。そこには「12月13日、部局長等連絡調整会議で部局の意見聴取」とあり、1月に「最終意見調整」とあります。
 阪口理事に尋ねたいのは、「もう十分、学内の人々にこの案は周知されている」とお考えなのか、ということです。教員の私たち(私のばあいは学科主任でもある)は、今のままでは「大学院教員の原則英語化」の実施や「採用人事の英語要件化」を実施させられかねない立場にあるからです。だって、1月には「最終意見調整」が終わるのですよ。
 ここには、学内民主主義の無視、理事会専決体制の強行しか見えませんし、それは学問の府としての大学に全く似つかわしくないやり方だと思えてなりません。すぐさま「案」を撤回し、みんなが議論に参加できるスケジュールの再提案をすべきだと思います。

露呈する“トップ・ダウン”の本質
 私は、この怪政策文書「全学の国際化推進の仕組みについて(案)」に関して、①「計画」のテイを成していない点、②まっとうな「学問の府」の発展計画といえない荒唐無稽な「提案」でしかない点、③著しい学内民主主義の逸脱である点について、とり急ぎ私見を述べてきました。
 私には、「こんなもの放っておけばつぶれるよ。」と安穏としていられない思いがわいてきます。このような文章を作るのにどれくらいの日時を要したのでしょう。文書には「9月末…予備検討書作成」とありますから、今日まで3ヶ月くらいはあったと思われます。3ヶ月が長いとはいえませんが、これ程の荒唐無稽な文書が3ヶ月以上議論した揚げ句でき上がることの怖しさを感じます。
 つまり、けっこうな給料をもらって副学長や理事をやっている人の考えることがこのテイタラクだからです。
 私はこのような審議と提案を、いわば黙ってみている、学長はじめ理事会の任命責任と「経営」責任こそが問われるべきだと思います。このような熊大に、あるいは「大学」にふさわしくない不見識を放置しておいて、(あるいはそのような案を作る理事を任命しておいて)今度は「学長」決定から学内の構成員の投票(「意見聴取」)すら排除しようとする(そんな案が浮上しているときいている)なら、何をか言わんやです。
 理事会の「経営」能力と学長の識見は、この事態の中で熊大人の結束のための信頼を自ら放棄している——そんな熊大の“危機”を現出させているのではないでしょうか。
そこで、(1)この文書の撤回、大学にふさわしい審議の保障、(2)担当理事の解任、(3)撝元学長の任命責任、「経営」責任の明確化を求めたい、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 私は、熊大トップダウン体制・「理事会専決体制」の危険性の典型的なできごとだと把握しています。
 論じ尽くせぬ論点も多々ありますが、問題を提起し、組合員の皆さんの議論に待ちたいと思い、とり急ぎ「投稿」しました。

組合員・非組合員を問いません。
教職員の生の声をお届けください。


 

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