No.29
2000.12.12
熊本大学教職員組合
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恐るべし!!
 熊大当局の無責任体質,
 学外にも波及か?

——運営諮問会議へのWG「中間報告」提出の撤回を求める——


事態はどのように進んでいるか

 『赤煉瓦』№27(2000年11月24日)では,①運営会議ワーキンググループ『国立大学の現状と熊本大学の在り方について
(中間報告)(以下,WG「中間報告」と略す)に対する意見聴取の方法が,HPの「パブリック・コメント」のみによるものから,12月4日までに各部局・全学委員会での意見集約を併行して行なうものへ変更されたこと,②WG「中間報告」が12月18日(月)開催の運営諮問会議に提出され意見聴取される予定であること,以上の2点をお伝えし,本学構成員はWG「中間報告」の意見集約に積極的に参加していく必要があることを訴えました。
 その後,事態はどのように進んだのでしょうか。12月4日締切の各部局での意見集約の状況から確認しましょう。意見集約を組織的に行なった部局からは,「最終報告」作成までの審議手続きやスケジュールに関する疑義・再検討の要請からはじまり,WG「中間報告」の全体的主張に対する根本的疑義・再検討の要請,改革の個々の具体的施策に関する疑義・批判に至るまで,数多くの意見が集約されました。その一方で,意見集約がほとんど行なわれていない部局もあります。なかには,驚くべきことに,12月4日締切で部局内の意見集約を行なうことが構成員に何ら知らされておらず,意見がまったく出ていない部局さえあります
(部局名はあえて伏せておきましょう)。一体,こうした部局の責任者は何を考えているのでしょうか。部局内での意見集約の存在さえ構成員に知らせないというのは,職務放棄あるいは職務怠慢にほかなりません。
 12月18日の運営諮問会議にWG「中間報告」を提出することは,11月29日の評議会で報告されました。そこでは,運営諮問会議に提出することに対して批判や疑義の声が相次ぎましたが,予定は見直されることなく終わってしまいました。

無知蒙昧きわまる暴挙!

 このままでは12月18日の運営諮問会議にWG「中間報告」が提出されることになりますが,それは,まず形式的に見て二重の意味で不見識な誤った行為です。
 第一は,学内で審議・検討途中の段階のものを学外者に提示することです。当該組織内で未だ結論を得ていない,その意味で組織が責任をとり得ないものを部外者に開示するというのは,情報公開の一般的常識から外れています。そもそも,WG「中間報告」は,WGの上部組織である運営会議においてさえ,未だ一度も正式に検討されたことがないものなのです。  
 第二は,提出先が運営諮問会議であることです。学長はじめ大学当局は,運営諮問会議の意見を単に聞くだけであるというのかもしれません。確かに,運営諮問会議は「大学の運営に関する重要事項について外部有識者の意見を聞くための組織」です。しかし,運営諮問会議は,学長に対して助言・勧告の権限を有しています。この助言・勧告は,法的拘束力をもつものではなく,「学長がその内容に従う法的な義務を生ずるものでは」ありません。しかし,政府・文部省はそれ相応の重みをもって受けとめるべきであると主張しています。“重みをもって受けとめる”とは,具体的にどのようなことか定かではありませんが,仮に運営諮問会議の助言・勧告に従わない場合,その判断理由を説明する責任を負うことになるのは必至でしょう。こうした意味において,運営諮問会議は大学に対して大きな権限を有しており,そうした会議に審議途中のWG「中間報告」を提出するというのは,あまりにも危険です。
 さらに,大学と運営諮問会議との健全な関係という点からも問題です。運営諮問会議は大学に大きな権限を有していますが,それが「大学の自主的,主体的な判断」を侵すものであってはならないことは政府・文部省が強調したところです。大学の自治・主体性を侵すことのない大学と運営諮問会議との健全な関係とは,まず大学内で結論を得た事項を運営諮問会議に審議してもらい,そこからの意見や助言・勧告を参考にして大学が結論を練り直すというものであるはずです。学内で審議途中のものを学外に提示して意見を聴取すれば,大学の自主的判断が実質的に侵されることになるのは間違いありません。これは,大学自らが運営諮問会議との健全な関係を放棄するものです。
 以上のことから,予定されている運営諮問会議へのWG「中間報告」提出は,情報公開の一般的常識,運営諮問会議の性格理解を欠いた無知蒙昧きわまる暴挙と言わざるを得ません
(「」内は運営諮問会議の設置を義務付けた「学校教育法等の一部を改正する法律」の国会審議における政府・文部省の答弁からの引用)。

内容もお粗末

 内容的に見ても,WG「中間報告」は運営諮問会議に提出すべきではありません。内容があまりにも杜撰
(ずさん)なのです。
 運営会議WGの設置当初,その検討事項の一つには「国立大学(熊本大学)の独立行政法人化に伴う問題点等の整理」が挙げられていました。ところが,WG「中間報告」では,国立大学の独法化に関するWG独自の検討はまったく行なわれていません。政府・自民党・文部省・国大協などの関係文書の抄録を掲載しただけで,「国立大学に関する独立行政法人化の内容や法整備がなされていない現段階で,独立行政法人化そのものや,法人化後の熊本大学の在り方を論ずることができない」とし,「設置形態の如何にかかわらず,……厳しい状況の下でも生き残れる強固な大学作りの具体的戦略を検討しようとした」
(1頁)としています。これには驚きです。すでに東京大学・名古屋大学・大阪大学などでは報告書をまとめていますが,現在,文部省・国大協・各国立大学に課せられている課題は,独法化の内容や法整備が整わない段階であっても,仮に国立大学の設置形態を変更するとしたら,大学に不可欠な条件は何かを明らかにすることにあるからです。WG「中間報告」は,この国立大学に共通した重要課題を回避し,しかも自らの任務を勝手にすりかえているのです。これは情勢をまったく見誤っています。
 では,「設置形態の如何にかかわらず,……厳しい状況の下でも生き残れる強固な大学作りの具体的戦略」とは何でしょうか。それは,1998年10月の大学審議会答申が提言した改革施策を実践することであると言います
(5頁)。しかし,大学審答申の施策がなぜ「生き残れる」施策であるのか,根拠や見通しは微塵も示されていません。WG「中間報告」は改革を高らかに謳っています(「国立大学を根本的に変革」とまで言います)が,そもそも,なぜ改革が必要であるかでさえ根拠が明示されていないのです。唯一あるのが,随所に見られる「生き残り」「大学間競争」だけです。そして終いには,「本WG(組織運営部会)は,法人化が避けられないとの状況認識を共有しつつ……」(57頁)と無根拠のまま独法化を容認してしまっています。
 WG「中間報告」全体の主張を整理すれば,改革の必要性の内在的な根拠を欠いたまま大学審答申に基づく改革を説き,ひいては独自の検討を回避しながらも独法化を容認するといったものです。しかも,この主張を支えるのは「生き残り」「大学間競争」という外因のみで,WG「中間報告」の改革構想は大学の主体性をすっかり失ってしまっています。
 個々の改革施策については,もしこんなことをしたら現場が大混乱になり,教職員が多大な負担を受けてしまうと容易に予想される施策が,現状分析を欠いたまま無秩序に羅列されています。WG「中間報告」では,改革施策は「設置形態の如何にかかわらず,……厳しい状況の下でも生き残れる強固な大学作りの具体的戦略」であるとされていますが,実際のところWGでは,“独法化した場合の大学における施策を検討してほしい”という旨,事務局から説明を受けて個々の施策を検討したと聞きます。なるほど,「本来,研究資金は,科学研究費補助金などを含む外部資金を獲得することによってすべき」
(33頁)とする認識や,留学生の受け入れ数拡大を国際的な学生獲得競争と見なす認識(42頁)は,独法化した大学を想定してのものなのでしょう。しかし,これは独立行政法人という制度を正確に理解していないものです。独法化は民営化ではありません。運営交付金という形で政府資金を受けて運営されるものであり,外部資金や学生集めで私立大学とも競争し,それに勝利して潤えばよいといったものでは決してありません。多くの政府資金を受けながら私立大学と同等に争うことなど,社会的に許されることではないはずです。また,独立行政法人は“赤字は出すな,黒字も出すな”という政府の厳しい統制の下におかれる制度なのです。
 以上のように,自らのおかれている状況を見誤ったうえに,報告書としての論理性,大学の主体性を欠いてしまっている不見識なWG「中間報告」を学外者に提示することは,大学として恥ずべき行為であり,断じて控えるべきです。

運営諮問会議を冒涜した学長の発言

 11月29日の評議会において学長は,WG「中間報告」を運営諮問会議に提出することについて出された多くの批判・疑義に対して,“慎重に配慮してやるから,大丈夫だ” “うまくやる”といった趣旨の発言に終始したと聞きます。学内で結論を得ていないものを学外者に提示して意見を聴取するのに,“慎重に配慮してやる” “うまくやる”とは一体どういうことでしょうか。端的に言って,学外者を誤魔化すということにほかなりません。これは,大学の運営について審議し,助言・勧告の労をとられる運営諮問会議の委員の方々を冒涜
(ぼうとく)した失礼この上ない発言です。
 この学長の発言は,けっして失言ではなく,確信に基づくものなのかもしれません。何しろ,WG「中間報告」には,運営諮問会議について「本学のよき理解者,支持者として大いに活用すべきである」
(52頁)と記されているのですから。これを文字通り解せば,大学が都合のいいように利用するといった意味にほかなりません。

12月14日の運営会議に注目を!

 上述した通り,WG「中間報告」は多くの問題を孕んだ杜撰なものであり,また部局で集約された意見には根本的な批判や疑義が多く含まれています。「最終報告」の作成には,寄せられた意見に謙虚に耳を傾けながら,WG「中間報告」を 抜本的に検討し直すことが不可欠です。それには,1月末までの当初のスケジュールを見直すことも必要となるでしょう。
 我われ熊本大学教職員組合は,運営諮問会議へのWG「中間報告」提出を撤回することと並んで,「最終報告」作成のスケジュールの見直しも含めて慎重な学内審議を行なっていくことを,大学当局に強く要望します。
 12月18日の運営諮問会議までにこの問題を審議し直せるのは,12月14日(木)開催の運営会議しかありません。みなさん,14日の運営会議の結果に注目しましょう。我われは,学長ならびに運営会議のメンバーがせめてもの良識を発揮することを切に願ってやみません。
 本日,教職員組合はWG「中間報告」をめぐって緊急討論集会を開催します。時間・会場は次の通りです。宜しく御参集ください。
   日時:12月12日(火)18:00〜  会場:くすのき会館 レセプションルーム


 

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