No.42
2001.3.22
熊本大学教職員組合
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発生医学研究センターの任期制教員の再任手続き決まる

 さる3月7日、医学部教授会において「熊本大学発生医学研究センター教員の再任審査等に関する内規」が承認されました。この「内規」は、昨年4月発足した発生医学研究センター(以下「発生研」という)の任期制教員をその任期満了後も引き続き任用するかどうかを決める再任審査の手続きを定めたものです。本報では、この「内規」の全文を掲載するとともに解説を行います。
 本来この規則は、早期に制定され、任期付き任用が始まる前に本人達に提示されるべきものでした。赤煉瓦No.39でお伝えした通り、昨年12月の組合との懇談・交渉の席で、発生研の任期制導入の際の一連の手続きが本来あるべき形で進んでいなかった事をセンター長・医学部長ともに認めています。またその席上、再任審査の細則を医学部で作成中であるとの発言がありました。今回、それが医学部教授会を通過したのです。
 発生研は熊本大学で任期制が導入された最初の部署であるため、発生研の動向が、今後他の部署で任期制が導入される際にも前例として大きな影響力を持つと考えられます。そのため、発生研以外の教職員もこの事に充分注意を払っておく必要があります。教職員組合ではこの「内規」に関する教職員の幅広い意見を聞くためのアンケートを計画しています。

「内規」の解説
この「内規」で示されている再任審査手続きをまとめると以下の様になる。

1.業績評価委員会(以下「委員会」という)を置く
 委員会は、医学部教授会メンバー7名(発生研の教授を含まない)と発生研外部評価委員からなり、医学部長が委員長を務める。(第2〜5条)
2.教授の再任審査手順
(1) 教授は任期満了の1年半前までに自分の所属する分野(註:発生研の「分野」は医学部の「講座」に相当する組織単位)の業績に関する資料を作成する。(第6条)
(2) 教授が委員会において、発表を行う。(第7条)
(3) 上記の資料、発表内容等に基づき、委員会で協議を行い、委員長が業績評価を行う。(第8条の1,2)
(4) 委員長が業績評価を文書で教授に通知する。(第8条の3)
(5) 業績評価に異議があれば、教授は委員長に申し立てできる。委員長は申し立て内容を委員会に諮る。(第8条の4,5)
(6) 委員長が業績評価を教授会に報告する。(第8条の6)
(7) 任期満了の1年前までに再任の可否を決定する。教授会において、3分の2以上の賛成により再任可となる。(第10条の1,2,3)
(8) 医学部長が、再任の可否を教授に文書で通知する。(第10条の4)
3.教授以外の教員(以下「助教授等」という)の再任審査手順
(1) 助教授等が任期溝了1年半前までに自分の業績に関する資料を作成する。(第12条)
(2) 所属分野の教授が上記資料及び面接を元に、任期満了の1年前までに業績評価を行う。(第11条,第13条の1)
(3) 教授が評価内容を文書で委員長に報告する。(第13条の2)
(4) 委員長が業績評価を文書で助教授等に通知する。(第13条の3)
(5) 業績評価に異議があれば、助教授等は委員長に異議申し立てできる。申し立てをした助教授等は自ら委員会で発表を行い、委員会が再評価を行う。(第13条の4,5)
(6) 委員長が業績評価を教授会に報告する。(第13条の6)
(7) 教授会において、3分の2以上の賛成により再任可となる。(第14条の1,2)
(8) 医学部長が、再任の可否を助教授等に文書で通知する。(第14条の3)

 再任審査は、(1)業績評価(2)再任の可否の決定、の二段階で行われる事になっている。したがってここで言う「評価」という言葉には、再任の可否の判断は含まれていない事をまずおさえておく必要がある。
 「内規」の中には注意しておくべき点がいくつかある。一番の注意点は、教授と教授以外の手続きが異なる事である。教授の業績評価は委員会が行う(厳密には委員長が決定する)が、教授以外の業績評価は所属分野の教授が行う事となっている。この様な規則の下で、助教授・講師・助手と教授との間に健全な関係が保てるのかどうか、不安が残る。
 異議申し立てについても注意が必要である。不服のある場合異義申し立てができるのは業績評価に対してであり、最終結論である再任の可否に対してはできない。
 再任の可否は教授会が決定する事になっているが、再任可となるためには3分の2以上の賛成が必要である。逆に言えば、わずか3分の1が再任不可とするだけでクビになってしまうという事で、いささか厳しすぎるのではないかとの意見もありうる。
 発生研では任期5年となっているが、「内規」によると評価対象となるのは最初の3年半の業績のみとなってしまう。再任の可否の決定は任期満了まで時間的余裕を持って行う必要はある。しかし一方で、そうすれば評価対象期間が短くなってしまうというジレンマがここにはある。
 この「内規」は再任審査の手順についての記述が主であり、具体的な評価基準・再任基準は示されていない。第16条によれば、これらは別途教授会で定められる事になる。任期中に何をすれば再任されるかという、より具体的な基準を早期に示す必要があるのではないか。
 昨年12月の懇談・交渉で組合は、全国的に任期制導入部署が少なく教員の流動性が低い現状に鑑み、教授あるいはセンターが教員の異動先のケアをする必要のある事を指摘した。この事は任期制の国会審議の際に政府も認めている。「内規」第15条の前半には「再任審査を行うにあたって、我が国における大学教員及び研究所研究員等への任期制導入による人材の流動化が確立していない状況を十分考慮するものとする。」とある。この条文は、一見組合の主張を一部取りいれた様にも見え、教員に安心感を与えるものかも知れない。しかし組合の主張する異動先のケアとは異なるものであることは押さえておかなければならない。
 別の意味て注目すべきなのは第15条の後半である。先の懇談・交渉で組合は、女性教官の出産・育児休暇の期間は審査対象にしない、もしくはその分任期を延長する事を規則で定めるべきとの主張をしたが、その意見が採用されており、この点は評価できる。条文では「出産・育児等により勤務できなかった期間等」とあり、懇談・交渉の席上センター長自らが指摘した、留学による中断期間がこれに含まれるのかどうか、確認が必要である.

熊本大学発生医学研究センター教員の再任審査等に関する内規

   第1章 総則
 (趣旨)
第1条 この内規は、熊本大学教員の任期に関する規則第4条第2項の規定に基づき、熊本大学発生医学研究センター(以下「センター」という。)教員の再任審査等に関し、必要な事項を定めるものとする。

   第2章 業績評価等
 (業績評価委員会)
第2条 再任審査に係る業績評価に関する事項を審議するため、医学部教授会(以下「教授会」という。)に業績評価委員会(以下「委員会」という。)を置く。
 (委員会の組織)
第3条 委員会は、次に掲げる者をもって組織する。
(1)医学部長
(2)医学部又は大学院医学研究科から選出された教授 4人
(3)エイズ学研究センター、動物資源開発研究センター又は保健管理センターから選出された教授 2人
(4)発生医学研究センター外部評価委員会委員
2 前項第2号から第4号までの委員は、医学部長が委嘱する。
 (委員長)
第4条 委員会に委員長を置き、医学部長をもって充てる。
2 委員長は、委員会を招集し、その議長となる。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめ委員長の指名する委員がその職務を代行する。
 (議事)
第5条 委員会は、委員の3分の2以上の出席によって成立する。
2 委員会の議事は、出席した委員の3分の2以上をもって決する。
 (業績評価資料の作成)
第6条 再任を希望する教授は、任期満了の日の1年6月前までに、当該分野に係る業績評価資料を作成するものとする。
2 業績評価資料の評価項目は、次に掲げるとおりとする。
(1)人員構成
(2)教育活動
(3)研究活動
(4)研究業績
(5)学術及び社会活動(併任、学会、学術誌、各種委員会等)
(6)研究費獲得状況
(7)その他評価を行うために適切な業績
 (評価項目の発表)
第7条 再任を希望する教授は、委員会において、評価項目lこついての発表を行う。
 (業績評価の決定)
第8条 業績評価は、委員の協議に基づき、委員長が行う。
2 業績評価は、次に掲げる事項について、業績評価資料、委員会における発表内容、質疑等により行うものとする。
(1)教育活動に関する事項
(2)研究活動に関する事項
(3)本学の管理運営、社会への貢献等に関する事項
(4)その他必要な事項
3 委員長は前条により評価項目について発表を行った教授に、その業績評価を文書により通知する。
4 前項の通知を受けた教授は、業績評価について委員長に対し、異議の申立てを行うことができる。
5 委員長は、申立て内容を委員会に諮るものとする。
6 委員長は、業績評価を教授会に報告する。
 (意見の聴取)
第9条 委員長は、必要があるときは、委員以外の者を委員会に出席させ、意見を聴くことができる。

   第3章 教授の再任の可否
 (再任の可否の決定)
第10条 再任の可否は、委員長からの報告に基づき、教授会が決定する。
2 前項の決定は、再任審査を受ける教授の任期満了の日の1年前までに行うものとする。
3 再任の決定は、出席教授の3分の2以上の可票を得ることを必要とする。この場合において、当該教授は、投票に加わることができない。
4 医学部長は、再任の可否について、当該教授に文書により通知する。

   第4章 助教授等の再任の可否
 (助教授等の業績評価)
第11条 教授以外の教員(器官形成部門組織制御分野の助手を除く。以下「助教授等」という。)が再任を希望する場合は、任期満了の日の1年前までに、当該分野の教授が業績評価を行う。
 (再任個人評価資料)
第12条 助教授等は、任期満了の日の1年6月前までに再任個人評価質料を作成するものとする。
2 再任個人評価資料は、第6条第2項第2号から第7号までに定める評価項目を含むものとする。
 (業績評価の決定)
第13条 評価を行う教授は、当該分野に所属する助教授等について、再任個人評価資料及ぴ面接により業績を評価するものとする。
2 評価を行う教授は、評価内容を文書により委員長に報告する。
3 委員長は、業績評価を文書により当該助教授等に通知する。
4 前項により通知を受けた助教授等は、業績評価について委員長に対し、異議の申立てを行うことができる。
5 委員長は、異議の申立てを行った助教授等に業績評価に関する発表を求め、委員会において再評価を行う。
6 委員長は、業績評価等を教授会に報告する。
 (再任の可否の決定)
第14条 再任の可否は、委員長からの報告に基づき、教授会が決定する。
2 前項の決定については、第10条第3項前段の規定を準用する。
3 医学部長は、再任の可否について、当該助教授等に文書により通知する。

   第5章 雑則
第15条 再任審査を行うにあたって、我が国における大学教員及ひ研究所研究員等への任期制導入による人材の流動化が確立していない状況を十分考慮するものとする。また、出産・育児等により勤務できなかった期間等については、審査の対象期間としないものとする。
 (雑則)
第16条 この内規に定めるもののほか、この内規の実施に関し必要な事項は、教授会が別に定める。


   附 則
 この内規は、平成13年4月1日から施行する。




 

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