2004.2.17 |
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効率化係数1%、病院経営改善係数2%で決着させてよいのか! |
すでに『赤煉瓦』30号(1/13)で報じたように、昨年秋、財務省は、2005年度から国立大学法人等への運営交付金について、事務経費や事務職員人件費などの一般管理費に3%、教員の人件費など教育研究費に1%の効率化係数を課すという新たな算定ルールを提示していました。私たち教職員組合は、これが適用されれば法人化後の大学運営にきわめて深刻な事態をもたらすと、直ちに学長懇談を申し入れ、この問題では国大協や大学当局とも協力しながら抗議の声をあげていくことを確認しました。文科省は、全国の大学関係者からの抗議を前に、引き続き財務省と交渉を進めると公言せざるをえず、1月末まで結論は先送りされていました。そしていよいよ運営交付金算定ルールに関する文科省と財務省の合意内容が明らかになりました。 文科省と財務省が合意した中身は、「国立大学法人運営交付金算定ルール(案)の概要」によれば、2004年度の運営交付金を基準に、その総額から設置基準に基づく専任教員数および標準法に基づく附属学校教員数に必要な給与額を除いたものに「効率化係数」として1%をかけ、5年間毎年削減するというものです。その削減額は年約92億円と言われています。また、附属病院に対しては、財務省案どおり「経営改善係数」2%が課され、達成できなければ運営交付金がその分削減されることになります。 ただし特色ある教育研究活動に対し交付金を増額する「特別教育研究経費」の創設によって、全体的には現在と同程度の予算は確保できると文科省は主張しています。 それに対して例えば共同通信(1/28)は、「予算削減幅が当初案より相当圧縮されるため国立大の反発は和らいで」いるとし、「文科省は近く大学側にこの方針を通知。各大学はこれに基づき、六年間の中期目標期間中の収支見通し算定に入る」などと報じています。全大教も、こうした文科省と財務省との妥協案を、「全大教の取り組みや国大協をはじめとした大学・高等教育関係者の努力により私たちの要求を不十分な形ながらも反映したもの」と文科省案に一定の評価を与えています。 しかしながら、「効率化係数」を設けるということ自体、「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること」とする国会の付帯決議(参議院文教科学委員会)を無視した不当なものです。そもそも国大協の運営交付金問題に対する論点は、効率化係数がいくらにするかという問題ではなく、先行独法にならって効率化係数をかけることは、教育・研究機関としての大学の性格になじまないというものでした。だからこそ昨年11月12日の国大協要望書「国立大学関係予算の充実について」では「運営交付金を、その性格に鑑み義務的経費として取り扱い、効率化係数を適用しないこと」を要求していたのです。そうである以上、財務省の譲歩によって削減率が軽減されたことで、納得あるいは妥協すべきではありません。いったんこのようなルールを認めてしまえば、今後パーセンテージの変更は政府の裁量しだいということになってしまうでしょう。 また今回、大学予算全体を概算要求基準(シーリング)の対象とする問題については、今夏の概算要求時まで先送りする、と報じられています。その点で例えば『科学新聞』(1/6)の「心配されていた国立大学法人の運営が危機的状況になることはなさそうだ」とする現状認識は誤まっています。たんに問題の先送りがなされただけで、国立大学関係者の不安はけっして解消されていません。引き続き国民各層と連帯しながら、先行独法と同様な「はじめに削減ありき」の算定ルールに反対し、日本の大学・高等教育の健全な発展と維持にふさわしい財政保障を求めていく必要があります。 現時点では、合意案に対する国大協の見解は示されていません。組合は、学長に対してこの問題に関する懇談を申し入れています。この案によって熊大の場合どれくらいの削減額になるのか、国大協はどのような対応をとるつもりなのか、それに学長はどうのぞむのか、こうした問題については改めてお伝えしたいと思います。 |