No.42
2004.3.4
熊本大学教職員組合
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驚くべき「大学教員任期制法」の曲解!!
――外国人教師処遇問題をめぐって(2)――

 『赤煉瓦』36(2004.2.16)では,昨年末に浮上した法人化後の外国人教師の処遇問題――法人化後,外国人教師を任期付き教員に切り替えようとする問題――の経緯をお伝えし,それが任期制導入の手続き,学内審議のあり方,当事者への対応のいずれの面においても,重大な問題を孕んでいることを明らかにしました。その後,2月26日開催の評議会で動きがありましたので,その後の経過と熊本大学当局の対応の問題点をお伝えします。

現職の外国人教師は任期なしの常勤教員に
 昨年12月25日の評議会「決定」では,法人化後は7名の外国人教師のポストを3年任期の有期労働契約の常勤教員(助教授。再任は2回に限り可)とし,法人化後も勤務を希望する現職の外国人教師5名についても,2005年度以降は同じ待遇に切り替えるとされていました。その後,現職外国人教師5名からの嘆願によってはじめて実現した学長と現職外国人教師5名との話し合い(2月16日・24日)を経て,2月26日の評議会では12月25日の評議会「決定」を修正し,現職の外国人教師5名については,任期付き教員への切り替えを行なわず,任期の定めのない常勤教員(助教授)とすることが決定されました。
 『赤煉瓦』36で指摘した通り,1年任期の契約を繰り返している(実質的に期間の定めのない雇用となっている)現職の外国人教師に対して更新回数を限定して労働契約を結ぶのは,労働条件の不利益変更にあたること,また法人化に際しての就業規則作成に関する国立大学協会の解説文書『国立大学法人化に伴う就業規則作成に関する課題への対応』(文責:国大協第4常置委員会作業委員会専門委員・盛誠吾[一橋大学教授])にも,「法人化に際して労働契約に期間を付すためには,あくまで当該職員の同意が必要となると考えられる」(20頁)と明記されていることからすれば,現職外国人教師5名の処遇に関する2月26日評議会の新たな決定は当然の判断です。

労働基準法第14条に基づく任期制導入は従来通り
 とはいえ,法人化後の外国人教師の処遇問題が解決したわけではありません。もう一つの重要問題――現職の外国人教師が退職した後の扱いは,労働基準法第14条・「国立大学法人熊本大学職員雇用規則(案)」第7条に基づいた3年任期の有期労働契約の常勤教員(助教授または講師。再任は2回に限り可)とするという問題――が,依然として12月25日の評議会「決定」のまま残っています。現職外国人教師のうち2名の方が今年度限りで退職し,後任人事を進める必要があるため,この問題の解決は急がねばなりません。

驚くべき熊大当局の「大学教員任期制法」解釈!
 『赤煉瓦』36では,現職外国人教師退職後のポストを労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条に基づく任期制とする根拠として熊大当局が挙げた“「大学の教員等の任期に関する法律」(以下,「大学教員任期制法」と略す)を適用できない場合”とは,「大学教員任期制法」の趣旨・法体系の整合性(憲法違反の恐れを回避するため)を踏まえれば,任期制を導入できないことを意味することを確認するとともに,法人化後も大学教員=教授・助教授・講師・助手に任期制を導入する場合には「大学教員任期制法」・「雇用規則(案)」第8条に基づいて行なうのが大学の責任を果たす途であると主張しました。
 これに対して,熊大当局は未だに“「大学教員任期制法」を適用できないため,労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条を適用する”という見解を崩していません。では,「大学教員任期制法」を適用できない理由とは何でしょうか。外国人教師が今年度限りで退職し,後任人事を進める必要がある部局(以下,A部局と記す)からの問い合わせに対して,人事課長は“「大学教員任期制法」第4条第1項1号に基づく任期制導入は,多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織を単位に行なうものであり,特定の職=ポストごとに行なうことはできない。「大学教員任期制法」に基づくならば,その学部全体を任期制にしなければならないことになる。それゆえ,「大学教員任期制法」ではなく,労基法第14条を適用する”と回答しています。この見解は,2月26日の評議会の場でも,文部科学省・厚生労働省に確認済みのものであることが学長から示されました。
 以前,熊大当局は「大学教員任期制法」を適用できない理由として,“外国人教師という特殊な職務を継承するため”を挙げていましたが,今回その理由は姿を消し,“「大学教員任期制法」第4条第1項1号に基づく任期制導入は,教育研究組織を単位にするものであり,特定の職=ポストごとには行なえないものである”という理由を新たに示したのです。しかも,それは文部科学省のお墨付きであると言います。
 しかし,熊大当局の新たな見解は,「大学教員任期制法」の基本中の基本を曲解,もしくは誤解したものであり,驚嘆せざるを得ません。文部科学省のお墨付きであると言うのですからなおさらです。 

文部省作成の資料からも明白!
 熊大当局の新たな見解が「大学教員任期制法」を曲解・誤解したものであることは,1997年当時に文部省高等教育局が作成した解説資料である「大学の教員等の任期に関する法律Q&A」(『大学資料』134,1997.10)からも明白です。
 まずQ4を見ましょう。

Q4 どのような場合に教員に任期を定めることができるのでしょうか。
A. 大学教員に任期を定めることができるのは,第4条第1項各号のいずれに該当する場合となっており,具体的には,以下のように定められています。
ア.先端的,学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育組織で行われている教育研究分野又は方法の特性にかんがみ,多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。(第1号)
 「先端的,学際的又は総合的な」という文言は,当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性の例示であって,これらに限定されるわけでありませんが,いずれにしても多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織でなければなりません。この場合,教育研究組織には,学部や研究科だけでなく,講座や研究部門といったものも含まれます。また,当該教育研究組織を構成するすべての職を任期付きとすることも,一部の職のみを任期付きとすることも可能です。(下線は引用者)

 「大学教員任期制法」第4条第1項1号でいう教育研究組織とは,学部や研究科といった大きな組織から講座や研究部門といった小さな組織まで,大小様々な組織です。そして,下線部の記述を一見すると,任期制導入の単位は教育研究組織であるかのような印象を受けます(人事課長の新たな解釈は,この部分に着目したものなのかもしれません)。しかし,重要なのは後段の二重下線の記述です。教育研究組織の職=ポストすべてを任期制とするのではなく,一部の職=ポストのみを任期制とすることが可能であると明記されています。これを踏まえれば,「大学教員任期制法」第4条第1項1号に基づく任期制導入は,教育研究組織全体を単位とするものではなく,学部・研究科・学科・専攻・講座・研究部門といった大小様々な教育研究組織において,多様な人材の確保が特に求められる職=ポストを指定して行なうことができるものです(したがって,ある講座の一つのポストを任期制と指定することも原理的に可能です)。それゆえ,「大学教員任期制法」に基づく任期制の導入には,学部や研究科はもちろんのこと学科・専攻・講座・研究部門といったレヴェルにおいても任期制に適合した専門性の職=ポストであるかどうかを検討する手続きが不可欠となるのです。
 「大学教員任期制法」第4条第1項1号に基づく任期制導入が,教育研究組織単位ではなく,特定の職=ポストを指定して行なうものであることは,Q7を見れば一目瞭然ですので,引用しておきます。

Q7 第4条第1項第1号に該当する多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の教員には,全員任期を定めなければならないのでしょうか。
A.今回の法律では,どのポストが第1号に該当するかは,各大学において具体的に判断することとなります。その際,多様な人材の確保が特に必要と認められる教育研究組織において,任期を定める教員の範囲を,当該組織の中の特定の職種の教員や特定の学問分野を担当する教員のポストとするか,全ての教員のポストとするかは,各大学の判断に委ねられています。(下線は引用者)

 そもそも熊大当局自身がこうした法解釈をしていたはずです。それは,2000年4月の発生医学研究センターでの任期制導入に明らかです。そこでは一つの助手の職のみは任期付きとされませんでした。その理由を熊大当局は“その助手の職の専門性は任期制に適さないため”と説明しました。これは,当時の熊大当局が任期制は特定の職=ポストを指定して行なうものと理解していた証です。現在の熊大当局は,当時の熊大当局の理解を否定するのでしょうか。本当に,文部科学省が本来の法解釈を勝手に変更しているならば,指導責任が問われねばなりません。

労働基準法第14条適用の目的は何か?
 「大学教員任期制法」に基づいて任期制を導入しても,労基法第14条に基づく場合と経費面では何ら差がありません。前者の方が大学の責任を果たせる途である以上,前者が選択されて然るべきです。にもかかわらず,なぜ熊大当局は後者の途を選択するのでしょうか,理解に苦しみます。熊大当局の“「大学教員任期制法」を適用できない場合に,労基法第14条に基づいて任期制を導入する”という見解は,任期制は適さない専門性の教育研究組織であると判断した部局等に対しても,労基法第14条に基づく任期制を強要することを可能にするものです。また,今回の「大学教員任期制法」の曲解・誤解に基づき教育研究組織を単位に一律に任期制を導入しようとしているのでしょうか。このように推測されても仕方がないはずです。
 “労基法第14条に基づく任期制は恣意的に運用される恐れがあるのではないか”というA部局からの問い合わせに対して,人事課長は“運営会議・評議会の審議を経るので,恣意的な運用はない”と答えたと聞きます。人事課長は昨年12月25日の評議会以来の事態をどのように考えているのでしょうか。適用される法律の説明すら欠いた評議会審議,自らの見解の根拠の度重なる変更こそ,恣意的運用の極みと言わざるを得ないはずです。

大学の自主性と良識の恢復を!
 もはや熊大当局には,文部科学省のお墨付きという一点の論拠しか残されていないはずです。しかも,それは文部科学省自身の本来の法解釈と異なるお粗末なものです。いま熊本大学は,管轄省庁の無責任な法解釈・権威付けにすがるか,本来の法解釈に基づき自主的な決断を行なうかの選択で,前者を選択してしまっています。2月26日の評議会では,昨年12月25日評議会の審議の瑕疵(かし)について質問が出されても,大学当局は何ら答えることがないままであったと聞きます。これでは,法人化を前にして熊本大学は自主性と良識を失ったとしか見えません。“大学の自主性の拡大”が謳われる法人化ですから,法人化前に「奴隷根性」は一掃しておくべきです。
 一日も早く評議会が大学の自主性と良識を発揮する場として恢復することを,切に願います。

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