2004.10.27 |
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構造か、資質か!? 使用者側の恐るべき無責任さと責任転嫁!--外国人教師処遇問題をめぐって(6)-- |
9月15日、学長交渉を申し入れ 『赤煉瓦』No6(2004.8.10)では、6月28日の組合の「要望書」(①「3月29日の学長交渉において、大学当局が確約した事項について、一刻も早く文書による回答を行うこと」、②「前項の要望を受け入れないのであれば、誤った法解釈に基づいて評議会決定を行った責任を明確にした上で、2月26日の評議会決定を早急に見直すこと」)に対して、使用者側は今回の外国人教師任用が「大学の教員等の任期に関する法律」(「大学教員任期制法」と略す)の3条件に該当しないことを労基法14条適用の根拠としてあげましたが、それがまったく信憑性のないものであることを明らかにしました。こうした状況を受けて、我われ教職員組合は、9月15日、学長に対して交渉を申し入れました。
9月28日、学長交渉--使用者側のごまかしが明らかに! 現職外国人教師の退職後のポストに「大学教員任期制法」を適用できないと「誰が、いつ、どこで判断したのか」という組合の追及に、使用者側は、「12月25日の評議会で判断した」と回答しました。しかし、これまでの経緯に照らしてみれば、この回答は事実に反するものであると言わざるを得ません。この点を考える上で鍵となるポイントを簡単に確認しておきましょう。 ○2003年12月25日、評議会:
この「判断された」という表現は、受動態を使うことによって行為主を曖昧にし、責任の所在を明らかにすることを避けようとする、いかにも官僚的なごまかしの手法です。そこで、我われ教職員組合は、今回の交渉で、まずこの点を追及しました(使用者側と組合のやりとりの全貌は、交渉の詳細をまとめた『赤煉瓦』No.16、2004.10.27を参照して下さい)。ここで使用者側は、「昨年12月の評議会決定のときに判断したと聞いている」(大迫人事労務担当理事)、「11月20日の運営会議で考え方を示している」(総務部長)という新たな主張を展開してきました。しかし、この主張は奇怪なものです。なぜなら、かりに使用者側が言うように12月25日の評議会で「判断された」というのであれば、3月5日の就業規則に関する説明会における前人事課長の見解・3月20日のA学部教授会報告資料で示された学長見解と明らかに矛盾することになりますし、本当に、12月25日の評議会で「大学教員任期制法」の3条件に該当するかどうかについて十分な審議と判断がなされていたのであれば、その後の前人事課長の見解と学長の見解自体があり得ないはずだからです。さらに、この使用者側の新説は、12月25日の評議会で労基法14条適用という説明は受けていないという、複数の評議会メンバーの証言とも対立するのです。 この使用者側の説明にたいして、「評議会の資料にも労基法14条を適用することは記されていない。評議会の議事録はどうなっているのか。」と組合は迫りました。「記録はありません。」というのが使用者側の回答です。評議会の、しかもこれほど重要な案件が記録に残っていないというのですから驚きです。「A学部長や評議員に理解してもらうよう、きちんと説明するのが職務のはずだ。」という組合の追及に、使用者側は、「説明不足は認める。」(総務部長)と言いながら、「2月26日の評議会では、本来あるべき検討がなかった。評議会で決めたのだから、評議会の責任だ」(大迫人事・労務担当理事)という、開き直りとも思える発言をしました。はたして、使用者側が言うように、12月25日の評議会で、任期制法を適用できるかどうかに関する十分な審議と判断がなされたのでしょうか。どうして、「記録もない、記憶もない、でも言ったと思う」程度のまったく不十分な説明で、「審議のやり方に問題はない」と断言できるのでしょうか。問題は、こうした深刻な審議の不備にとどまりません。 再任規則もない!再任審査の基準もない!--使用者側の無責任体質、ここに極まる! 今回の交渉が行われたのは9月28日、つまり、今年3月31日で退職した2名の外国人教師の後任となる方々との契約(2年半任期で更新は3年任期で2回まで)を交わす10月1日のわずか3日前です。にもかかわらず、再任審査の規則も再任審査の基準もまだ出来ていないということが判明しました。 たしかに、使用者側が言うように、再任審査にかかわる規則がなくても雇用契約を結ぶことは可能です。しかし、将来無用なトラブルを招かないためにも契約時に再任審査のあり方・基準を示し、当事者が納得した上で労働契約を結ぶ方が賢明だということは、組合に指摘されるまでもないことでしょう。大学経営の観点からも、トラブルが起こらないよう、リスクコントロールをするのが人事課の仕事・責務のはずです。ところが、もし、雇用契約の際に再任審査のあり方は聞いていなかった、合意していなかったと言われたらどうなるか、知っていますか。」という組合の問いに、人事課長は、「そんな先のことは考えられない。仮定のことは答えられない」と答えるのみでした。また、「雇用契約を結ぶ際に、再任審査基準を提示していない場合、よほどの不祥事がない限りは2回再任されることになる。こういうことを知っていますか。」という組合の質問に対する人事課長の回答は、「それについてはコメントできません。」という、人事に関する実務責任者の発言とは到底思えない、無責任きわまりないものでした。評議会決定が2月26日ですから、半年以上もの間、人事課はこの問題を放置してきたことになります。これは、怠慢以外のなにものでもありません。 2004年10月1日採用の外国人教師の「職務内容」にも大きな問題 さらに問題なのは、今回採用された外国人教師の方々(と今後採用される外国人教師)の職務内容が、従来の外国人教師の職務内容とは異なり、「専ら外国語科目又は専門教育科目の授業を担当するものとする」(2月26日の評議会資料、「現在の外国人教師等の法人化後における取扱いについて(案)」)となっていることです。これでは、この職務内容が適用される方々に「授業」以外でその専門性を活かした仕事をやっていただこうとしても、「職務」としてではなく、あくまでも「善意」で引き受けていただくようお願いしなければならないということになります。今後もし、こうした方々に、国際交流の架け橋としての仕事や翻訳や通訳といった仕事を依頼する必要が生じたら、大学はどうするのでしょうか。一番困るのは、おそらく、こうした外国人教師の方々が配置される学部・講座や教科集団といった「現場」の人たちでしょう。 この職務内容の問題が再任審査基準の中身と密接に関連することは、誰の目にも明らかなはずですが、人事課はそれにすら気づいていませんでした。(少なくとも9月28日の交渉の段階で)A学部で検討されている再任審査基準の内容は、多くの点で、職務内容と矛盾するものでした。定められた職務内容からかけ離れた再任審査基準が作られようとしていることに対するコメントを求められた大迫人事労務担当理事は、一方で、「評議会がそのように決定した。評議会が悪い。」と言いながら、内容において明らかに問題がある評議会決定を見直すべきではないかという組合の指摘には、「評議会決定の内容に従ってやるように部局に求める」と述べるにとどまりました。評議会決定に問題があることを認識しながら、そのツケを当該部局に回すというこの大迫理事の発言は、人事と労務の実質的最高責任者としての職責を放棄するに等しいものではないでしょうか。原点に立ち返り、学部・講座や教科集団の意向を聞き、意見交換を行い、2月26日の評議会決定内容についても早急に見直すべきです。 「大学教員任期制法」の基本すら分かっていない--「多様な人材」の解釈で使用者側、無知を露呈! 今回の交渉によって、労基法14条適用による任期制の導入が、いかに杜撰な手続きと論拠のすり替えというごまかしによって拙速に決められたものかが、白日の下にさらけ出されました。最後に、「大学教員任期制法」適用の可否を「判断」した際に鍵を握った(はずの)、3条件の中の「①多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」の解釈を巡るやりとりの中で明らかになった使用者側の無理解に触れておきましょう。 「3条件に合うか合わないか専門家集団でないところが判断するから間違うんだ。だから部局が判断するよう『任期制法』は規定しているんですよ。部局がきちんと判断すれば、『任期制法』に基づいて任期制を導入できるんですよ。」という組合の指摘に、使用者側は、あっさりと「できると思いますよ。」と答えました。「今、できると言いましたね。」と組合が確認したところ、使用者側は、(あわてて)「条件にあえばですよ。」と答え、つけ加えて、「多様な人材」の解釈を組合に質問してきました。そこで、「いろんな人に来てもらうということだ。ネイティブスピーカーで、生きた外国語を教育できる人に来て欲しい...。」と組合が答えると、使用者側は、「多様な人が求められる教育研究ポストという意味でしょ。ポストを指定して、そこにいろんな分野の人に来てもらう。外国語の人がきたり、数学とか国語の人がきたりということではないんですか。」という珍説を披露したのです。運営会議や評議会といった重要な意志決定機関に的確な情報や資料を提供しなければならない担当事務部がこれではどうしようもありません。猛省を求めます。 2月26日の評議会決定見直しをあらためて強く求める これまで我われ教職員組合が再三指摘してきたように、2月26日の評議会決定が、審議手続きにおいても、そして、その審議内容においても、きわめて深刻かつ重大な問題を孕んだものであることが、今回の学長交渉で決定的になりました。自らの間違いに真摯に向き合い、誤りを誤りと認め、誠実に正すのが、学問の府としての真の姿ではないでしょうか。 残念なことに、10月1日付採用の人事は、労基法14条適用の任期制となってしまいました。しかし、ようやく使用者側も、ポストを指定して「大学教員任期制法」による任期制導入が可能なことを「理解」したようです。約2年半後には契約更新を迎えます。交渉において組合は、「10月1日に採用された外国人教師の契約を更新する際(あるいは、新規に契約を結ぶ際)には、『大学教員任期制法』適用の任期制に改善すべきである」と主張しましたが、問題が明らかになったにもかかわらず使用者側は、そうするとさえ明言することを避けました。この問題が記憶に新しい間に、そして、現評議会メンバーが在任している間に、職務内容の再検討はもとより、労基法14条適用という2月26日の評議会決定そのものを見直すべきです。 学長、そして、すべての評議会メンバーに訴えます。これまでの使用者側の見解の変遷と事の経緯をもう一度振り返るべきだと。使用者側は、「記録もない、記憶もない」まま、今回の事態は「評議会の責任」と言っています。評議会構成員は、どのように受け止めるのでしょうか。より良い熊本大学のために、学長と評議会がその良識を発揮することを願って止みません。 大学教員(教授、助教授、講師、助手)に任期制を導入する場合には、「大学教員任期制法」に基づくものとすることを、私たちは、ひきつづき強く要望していきます。 |