2004.11.1 |
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学長は長時間労働解消のための取り組みの先頭に立つべきである |
前号のニュースで、賃金不払い残業の解消が大学にとっての最優先課題であることを述べました。しかし、そのためには長時間労働を解消させていくことが不可欠です。基本的には、公務員時代の定員削減政策によって生まれた人員不足が原因であり、正規職員の増員によってしか根本的な解決はありえません。また、全国の大学で行われている「賃金不払い残業」という違法行為の責任は国にあるのであり、この解消を視野に入れた予算措置も必要と考えます。 しかし、それを実現するには国立大学全体の労使が共同した取り組みが不可欠です。社会的な理解も必要であり、時間をかけて大学の実情を説明しなくてはなりません。一方、前号のニュースでも述べたように賃金不払い残業の解消は急務です。緊急に大幅な正規職員増を行うことは確かに困難でしょうが、長時間労働の削減のために可能なあらゆる方策を早急に立てる必要があります。以下、それらの方策について具体的に述べていきます。 方策 業務の効率化 これは使用者も職員に求めているところです。基本的に教職員の意識改革によってしか進みません。教員の側も、書類の提出はゆとりをもって行うなど、職員が計画的に業務を遂行できるような環境作りに協力する必要があります。ある学部では教授会の出席が悪く定足数を満たさないために時間になっても始められないということがありますが、これでは職員に無駄な時間を消費させていることになります。残業をしなくてはできないような仕事を命じることも慎まなくてはなりません。 ただし、業務を効率的に遂行する能力には個人差があります。教職員の中にも「あの人は仕事が遅いのだから残業になるのは本人の責任、手当は要らない」という考えがあるかもしれません。しかし、現在の労働法はこのような考えを明確に否定しています。賃金は働いた時間によって支払う、業務の遂行能力は勤務成績として賃金に反映されるというのが基本です。またそのような人を的確に指導するのは使用者の責任でもあります。 方策 業務の削減 使用者はこれも行っていると言うでしょう。しかし、使用者のやっているのは上からの見直しとしか思えません。何が削減可能な業務か認識できるのは、末端で実際にその仕事を担っている人のはずです。例えば、事務職員が様々な委員会に陪席しますが、必要性に疑問を感じるものもあるでしょう。終業時刻以降にずれ込む会議ではなおさらです。そうしたものも、上からの見直しだけでは、従来の慣行等の理由でなかなか廃止されません。全職員に廃止できる業務を提案するよう求めるべきでしょう。 また、法人化に伴って新たな業務も増えています。新たな業務を導入する際には、それに見合う業務を減らすことを原則にすべきでしょう。いずれにしても、業務の削減には、教職員が廃止可能な仕事を自由に提案できる環境を作り、それに基づいて使用者が決断していくことが必要です。 方策 労働時間制度の利用 これは殆ど行われていません。労基法では、法定労働時間を1日8時間、週40時間と定めていますが、労使協定を結べば変形労働時間制など様々な勤務形態を可能にすることができます。また、業務に応じて勤務時間をシフトすることも可能です。例えば、会議などで終業時刻が遅くなることが予定されている日は、始業時刻を遅くし時間外労働を短くすることも可能です。ただし、この措置は労働者側の理解が不可欠であり、過半数代表者との労使協定や組合との団体交渉による合意が不可欠です。 教員の裁量労働時間制もいろいろな大学で導入されています。しかし、裁量労働時間制については、その濫用が長時間労働につながったという認識もあります。大学教員について合法的な労働時間制度をどう組み立てるかは重要な検討課題です。 方策 臨時職員などの雇用 上記の方策をとってもなお長時間労働が残るのであれば、それは業務に見合った人員が配置されていないということです。恒常的に時間外労働が必要であるのなら、それは人員不足に他なりません。組合はこれらの恒常的な人員不足については、基本的に正規職員で対応すべきと考えていますが、多くの企業で行われているように臨時職員で対応することもあり得るでしょう。入試業務などに伴う短期集中的な業務には短期間のアルバイトを雇用する等ということもあり得ます。そして長時間労働の解消のために人員を増やすことは、雇用機会の確保の観点から社会から求められていることでもあります。 厚生労働省、労基署は賃金不払い残業の廃止のために全力を挙げています。それは賃金不払い残業の蔓延が雇用機会を失わせ、経済に悪影響を与えているという認識があるからです。大学はこの人員確保も長時間労働削減の方策として明確に位置づけるべきです。 使用者側は有効な方策を何ら立てていない 以上、長時間労働の廃止の方策について述べてきましたが、実際に使用者側が行っているのは、超過勤務時間を少なくしましょうという掛け声と、「金曜日はノー残業デー」という宣伝だけです。業務の効率化は教職員の努力で進められるものですから、使用者側は何ら有効な方策を立てていないといって過言ではありません。 業務の効率化以外の方策は教職員が勝手に進めることはできません。使用者側が具体的方策を決断し、全教職員に協力を求めることが必要です。「労働時間制度の利用」については組合との団体交渉も必要です。ただし一方的に協力を求めるだけでは不十分です。学長自らが賃金不払い残業の解消を宣言し、勤務時刻の適正な把握と働いた分の賃金は必ず支払うことを約束しなくてはなりません。それが、この問題の解決のための出発点なのです。そして学長がこの出発点に立つのであれば、組合としても長時間労働の解消に向けて学長と協力して取り組む決意です。 問われるべき国と文部科学省の責任 大学における賃金不払い残業の横行は、定員削減政策と行政改悪の中で生まれた過密労働というツケを、賃金不払い残業の押し付けるという形で、労働者に回してきた大学の責任です。しかし各大学の人事部門の要は、すべて文部科学省の天下り人事によって固められているのですから、これを放置してきた国と文部科学省の責任も重大です。であれば、法人化後の賃金不払い残業問題への対応も、国の責任で進められなければなりません。 そのためにも、大学の賃金不払い残業の規模を隠蔽してはなりません。それは国の責任を棚上げすることになるからです。学長には、この観点からも賃金不払い残業の現状を明らかにし、その解消にむかって努力することを求めます。 |