No.11
2005.9.20
熊本大学教職員組合
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回答は示されたが −新勤務時間管理方法の問題点−
使用者は「労働時間適正把握基準」を遵守する気があるのか

 すでに赤煉瓦5号でお知らせしたように、7月25日の労使協議において使用者側は「労働時間適正把握基準」の遵守と、新たな勤務時間管理方法を8月中に示すことを約束しました。9月12日、事務局長名での「職員の勤務時間の把握について(通知)」が組合に示されました。しかし、その内容は基準の遵守とは程遠いものであり、組合として到底受け入れられるものではありません。組合は改めて労働時間管理のあり方について団体交渉を申し入れます。

新しい勤務時間の把握方法とは
 事務局長通知から時間外労働に関する部分のみ抜き出してみます。
1.
職員は終業時刻の30分前までに、時間外勤務申請時間数を別紙書式により申請する。
2.
課長等は、職務内容等を勘案して、必要な時間を設定し時間外勤務を命じる。
3.
やむを得ず、命じられた勤務時間と実際の勤務時間が異なる結果になった場合は、翌日課長等に報告し、確認を受け「変更後の時間外勤務欄」に記録する。

 自己申告、時間外勤務命令、確認を得て変更という流れによって時間外労働の時間数を決定しようということです。しかし、これには以下のような問題点があります。

新しい勤務時間把握方法の問題点
 第一に、事前申告と命令という手続きを前提にすれば、10分、15分といった短時間の時間外勤務が把握できなくなる可能性があることです。時間外労働か否かは業務の実態で判断されるのであり、命令の有無は絶対的な判断条件ではありません。命令がないから時間外労働として扱わなくて構わないということではないのです。第二に、必要な時間の設定の合理性の問題です。多くの職員を管理する管理者が、職員一人一人の必要な時間外労働時間を事前に決めるなどできるはずがありません。しかし、その決定は必要な時間外手当の額にも直結するわけですから管理者の責任は重大です。いきおい、時間数は少なめに設定せざるを得なくなります。第三に、実労働時間が命じられた勤務時間と異なることが例外視され、課長等の確認を得なければ変更の記入できないことです。何故、命じられた時間で終わらなかったのかと言われるのは必至です。それがいやで変更を申し出ない職員も多くなるでしょう。
 必要な時間外労働時間数が少なめに設定され、余分に労働しても変更が行いづらい、そういう「賃金不払い残業」の温床になるような把握方法であると言わざるを得ません。


そもそも、労働時間適正把握基準を遵守するつもりがあるのか
 事務局長通知には別添で「基準の抜粋」がつけられていますが、それは「使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する」という部分だけです。ここに使用者側の姿勢が端的に現れています。基準に書いてあること、そして組合が絶えず主張してきたことは、「労働時間の把握を職員の自己申告に委ねる場合は、実態を正しく記録し適正な自己申告を行うことについて職員に十分な説明を行う」ことです。ところが、この通知には「実労働時間どおりに、始業時刻と終業時刻を正しく記入しなさい」とはまったく書いていないのです。まさに基準違反の通知文です。
 適正把握基準には「時間外労働時間の削減のための社内通達が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因になっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合には、改善のための措置を講ずること」とあります。組合は労働時間適正把握基準に基づき、この文書自体の改善を強く求めます。

事務局長通知について次の変更を求めます
(1)
「課長等は(中略)必要な時間を設定し時間外勤務を命ずる。」の「必要な時間を設定し」を削除する。
【理由】
「必要な時間を設定」することに合理性は無く、むしろそれを越える労働時間の賃金不払い残業化につながる恐れがあります。おおよその時間の目安を指示することはあるでしょうが、時間帯として設定することはすべきではありません。

(2)
「職員は、やむを得ず命じられた勤務時間と実際の勤務時間が異なる結果となった場合は(中略)、確認を受け「始業・終業時間等記録簿」の「変更後の時間外勤務」欄に記入する」を以下のように修正する。
 「職員は、実労働時間に基づいて始業・終業時刻を正しく記録し、翌労働日に課長等の確認を受ける。」
【理由】
重要なのは実労働時間を記録することです。時間外労働時間が事前の指示通りにならないのは当たり前のことですから、変更は通常のことです。「やむを得ず」とか「確認を受け」てから記入するという記述は、正確な記録の阻害要因になります。正しく記録し、課長等が確認するだけで良いはずです。なお、記録された時間数について疑問があった場合でも、問い質すことは許されますが、一方的に変えさせることは違法行為です。

賃金不払い残業をなくすために
 組合の「実労働時間に応じて正確に記録するよう指導せよ」という要求に対し、使用者側は「適正把握基準を配った」から指導していると強弁しました。これで本当に適正把握基準を遵守するつもりがあるのでしょうか。確かに、学長は「従前の予算枠にこだわらない」と述べ、帳簿上の時間外労働についてはきちんと賃金を払うことを宣言しました。これは公務員時代と比べれば前進ですが、賃金不払い残業を無くすための第一歩に過ぎません。「適正把握基準」は帳簿上の時間外労働時間を実際の労働時間に一致させるための基準ですから、規準の遵守を約束したことは、第二歩目に取り組むことを表明したことなのです。しかし、使用者側は帳簿上の時間外労働時間短縮のみに重点を置き、実労働時間と一致させるための責任を意図的に放棄しています。組合は使用者側のこのような姿勢を徹底的に糾弾していきます。

組合は、賃金不払い残業を無くすために、次の4点を提案します。
1.
大学は勤務時間の自己申告について、実労働時間どおりに正しく記録するよう職員を指導すること。また、業務を自宅に持ち帰らないように指導を徹底すること。
1.
大学は、管理者等にたいして、正確な自己申告を阻害するような行為を取らないよう周知・徹底すること。
1.
職員が、実労働時間の記録のあり方について疑義を持った場合には、苦情相談員(人事課副課長)だけではなく組合または過半数代表者を通じて苦情を申し立てられるようにすること。
1.
上記について、各職場に組合と大学の連名で掲示を行うこと。


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