No.13
2005.10.7
熊本大学教職員組合
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疑問を残したままの新勤務時間管理方法
−使用者は実施後速やかに実態調査を行うべきである−

 赤煉瓦No.11で、10月1日から実施される新勤務時間管理方法の問題点を指摘しました。その後、9月26日の団体交渉でこの問題を扱うとともに、27日に開催された職員向けの説明会に参加しました。それらの結果を報告します。

使用者側は組合の変更要求を拒否
 団交において、組合は赤煉瓦No.11で提案した事務局長通知の2点の変更要求を説明しました。使用者側の回答は、原案のままでも組合が危惧する事態は生じないので変更は行わないというものでした。さて、もう一度使用者案を示します。
1.
職員は終業時刻の30分前までに、時間外勤務申請時間数を別紙書式により申請する。
2.
課長等(以下、分かりやすく管理者という言葉を用います)は、職務内容等を勘案して、必要な時間を設定し時間外勤務を命じる。
3.
やむを得ず、命じられた勤務時間と実際の勤務時間が異なる結果になった場合は、翌日管理者に報告し、確認を受け「変更後の時間外勤務欄」に記録する。
これに対し、組合の修正提案に従えば以下のような流れになります。
1.
職員は始業の際に実際の始業時刻を記録する。
2.
時間外労働が見込まれる場合には、終業時刻の30分前までに申請する.
3.
管理者は、職務内容等を勘案して時間外勤務を命じる.(時間帯は設定しないが、時間の目処を指示することはあり得る)
4.
職員は終業の際に実際の終業時刻を記録する。(定時退社の場合も含む)
5.
翌日管理者は記録の確認を行う。(疑問点について質問することはあり得ます。)
 違いは、時間外勤務命令の際に明示的な時間帯を設定するか、変更の記入をするのが管理者の確認を受けてからなのか受ける前なのかです。確認を受けなければ実際の終業時刻が記録できないような方式では、結果的に正確な自己申告が行われなくなる恐れがあると指摘したのですが、使用者側は何の根拠も示さないまま、変更されたらそのとおりに申告してくれるはずだと強弁しました。

説明会で実際出された質問から
Q.時間外勤務を行わなかった場合はどうするのか。
A.始業終業時刻の把握義務から、その場合でも管理者の印はもらってください。
Q.時間外勤務の申請をしないまま、仕事が17時30分以降にかかったらどうするのか。
A.管理者の確認を得てから、「変更後の勤務時間」欄に記入してください。
運用上の疑問が早くも出されています。組合方式に従えば定時退社の場合と同様に、実際の終業時刻を記録し、翌日管理者の確認をもらうだけですから何の疑問もありません。

以下のことは使用者側も認めています
 変更要求は拒否されましたが、実際の運用のあり方について大きな差があるわけではありません。以下は団交においても、また職員への説明会の場においても指摘されたことです。

(1)
変更後の労働時間欄は実労働時間に基づいて記入する。
(2)
記録は分単位でつける。
(3)
時間外勤務の申請がない場合でも、実労働時間によって時間外労働を記録する。
(4)
36協定の制限(1日6時間、月45時間、年360時間)を超えるような時間外勤務命令は出せない。しかし、実際に働いた場合についてはその分の賃金を出す。
(5)
適正な申告を阻害するような行為をしてはならない。
(6)
時間外勤務については就業規則にしたがって賃金を支給する。

 仮に、19時までの時間外勤務命令が受けたとして、実際の労働がちょうど19時に終わるということはあまりないはずです。19時12分に終わった、18時53分に終わったというのが普通でしょう。これを正確につけることを使用者も職員に求めているわけです。ならば、事前に管理者が設定した「時間外勤務命令の時間帯」に現実的な意味はありません。ただ、管理者に負担を強いるだけです。何故、このようなことにこだわるのか理解できません。

今後に向けた方策を提案する
(1) 適正な自己申告ために十分な説明を行うこと
 労働時間適正把握基準は「自己申告の対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正な自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと」を求めています。使用者は、説明会に出席した職員を通じて、各職場で説明が行われると期待しているようですが、それで責任が果たせるはずはありません。組合は「始業終業時刻を実労働時間に基づいて正確に記入する」ことを訴えるポスターを作成し、全職場に掲示せよと要求し、使用者側も認めました。しかしそれだけではなお不十分です。適正把握基準には説明すべき事項として「適正な自己申告によって不利益を受けることはない」ことが例示されています。組合はこの点もきちんと説明せよと主張しましたが、総務部長は「不利益を受けないことは当たり前だ。あえて触れるのは、職員との信頼関係を傷つける」と拒否しました。  しかし、使用者側も現状で熊大に賃金不払い残業があることを事実上認めています。今までこれを放置しておいて今さら「信頼関係」を持ち出すとは、厚顔無恥としか言いようがありません。適正な申告を行わせるための説明すべき事項の一例として厚生労働省が具体的に例示したのですから、もう少しそれを謙虚に受け止めるべきではないでしょうか。

(2) 適正に自己申告が行われているか調査を行うこと
 勤務時間の管理を職員の自己申告に委ねた場合、それが適切に行われているか否かチェックする責任があります。すでに、組合はこの方法についての危惧を表明しているのですから、それが組合の杞憂であると具体的な資料を基に説明する責任があります。1ヶ月経過後に以下の内容のアンケート調査を行うことを提案します。
(1)
時間外手当の申告をしないまま17時30分を過ぎて働いたときに、きちんと終業時刻の変更の手続きをしているか。
(2)
指定された時間外勤務時間の時間帯を越えて時間外勤務を行った場合、きちんと終業時刻の変更の手続きをしているか。
(3)
指定された時間外勤務の終了時刻前に仕事が終わってしまった場合、どのように対応しているか。
(4)
始業終業時刻の変更の確認を求めたとき、そのまま認められているか。  この調査は使用者の責任で行わなければなりません。早急な対応を求めます。

(3) 組合が関与した形での効果的な苦情処理システムを作ること
 勤務時間の記録について、「変更後の勤務時間の時間数を減らされた」「変更を申し出にくい雰囲気がある」「土曜日に出勤してたまった仕事をこなしたのだけれど言い出せない」などの不満が出る可能性があります。熊本大学の苦情処理委員会には委員として過半数代表者が入っていますが、窓口の苦情相談員は人事課副課長です。もちろん、労働条件事項なので組合に苦情を伝えてくれれば独自に改善に向けて取り組みます。しかしそれでは、正規の苦情処理手続きにのりません。組合推薦者を苦情相談員に加える、組合が苦情申し立てを代行するというようなシステムを作るべきです。

 事務量を減らさないまま、勤務時間の管理のみ強化すれば自宅への持ち帰 り残業などが増加する恐れがあります。この問題については別のニュースで 見解を述べることにします。

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