2005.11.21 |
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シリーズ「人勧準拠のココが問題」(5) |
人勧準拠で賃金を決めている企業はいろいろあるようです。しかし、組合がそれに同意していない場合も多く、国家公務員賃金が下げられていく中で団交での使用者側の姿勢が問題になるケースも増えています。いくつかの私立学校や日赤では労働委員会の調停や裁判も行われており、すでに不当労働行為とする判決が出ているケースもあります。人勧準拠の考え方は労使の合意による労働条件の決定という労働法の原則に矛盾するからです。 11月14日の熊本大学での団体交渉においても、使用者側の態度はまさに人勧準拠の考えのみの誠実交渉義務に反するものでした。このニュースでは、この事実を具体的に解説するとともに、使用者側に反省と今後の誠実な対応を求めます。 使用者側の行った誠実交渉義務違反行為 1.対応を賃金に決定権限のない人事労務担当理事に任せたこと 使用者側の提案は、基本給の0.3%切り下げです。このような重大な問題にもかかわらず、賃金についての決定権限を持たない大迫人事労務担当理事に交渉を委ねました。団体交渉の申し入れさえ理事名で行われており、交渉に対する学長の責任は明らかにされていません。なお、「社長に伝えておく」等として何一つ交渉が進展しない、実際上交渉権限のない者による形ばかりの交渉態度や、賃上げ交渉に際して決定権限のない者を交渉担当者としゼロ回答することは不誠実な団体交渉とされています(80年12月大阪特殊精密工業事件での大阪地裁判決など)。 2.切り下げの理由を人事院勧告以外示さなかったこと 通則法は、非公務員型の独立行政法人に対して、「当該独立行政法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない。」と定めています。使用者側はこれを理由に人勧準拠を提案したわけですが、提案に際し「業務の実績」の説明はまったくありませんでした。「社会一般の情勢への適合」についても、熊本大学職員の賃金水準など根拠になる数字を示さず、適合しているか否か自ら説明する責任を放棄しました。使用者側はまず通則法63条に基づいて基本給0.3%切り下げの理由を説明すべきです。なお、公務員型の特定独立行政法人には国家公務員の給与を考慮するように明記(通則法第57条)されていますが、非公務員型にはその規定はありません。 もとより、非公務員型とされた国立大学法人の賃金決定が労働法に基づいて労使協議の対象になることは、国立大学法人法案審議の際に政府参考人も明言したことです。その際、社会一般の情勢に適合するようにして下さいというのが法の趣旨です。使用者側は誠実な交渉を行う義務を負っています。そして人勧準拠のみの理由で実質的な団交に応じない姿勢は不当労働行為とされています(04年9月帝京中高事件での最高裁判決など)。 3.組合の主張に対し何の反論もせずに切り捨てたこと 使用者側は組合に対して誠意のある団体交渉をする義務を負っています。この「誠意」は主観的ではなく、客観性のあるもので無ければなりません。提案内容には裏づけのある説明をしなければなりませんし、組合の主張に反論する場合にもきちんと根拠を述べる責任があります。組合は『赤煉瓦』No.12(2005.10.6.)において、国立大学が法人化されていなければ今年の人事院勧告は1.5%増になったはずだと、具体的数字をあげながら指摘しました。団交においてこの点を問い質したところ、使用者側の発言は「あの出し方の根拠がわからない」と言うだけで何の具体的反論も行わないまま切り捨てました。組合試算でもラスパイレス指数を利用しましたが、「ラスパイレス指数の出し方も分からない」とまで述べる始末です。一方で、ラスパイレス指数を使った人勧に準拠した提案をしながら、ラスパイレス指数がよく分からないと言って組合の主張を批判するのですから話になりません。「わからないから受け入れられない。だから0.3%下げる」というのでは、とても誠実に交渉を行っているとは言えません。 学長は自ら誠意を持って組合との団交にのぞむべきである。 以上の誠実交渉義務違反は、大迫人事労務担当理事と井之上総務部長の労働法への無知と、労務管理者としての資質の無さをさらけ出したものです。しかし、最も批判されるべきはこのような人材に交渉を任せきりにして、自ら団交に臨もうとしない﨑元学長の姿勢です。予定される再交渉においても、いまだ学長が出席するとの回答はありません。組合は団体交渉への学長の出席を強く求めます。 |