2005.12.1 |
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11月22日、給与改定問題に関する組合と使用者側の第3回の団体交渉が行われました。 前回までの団交における使用者側の誠実交渉義務違反行為は『赤煉瓦』No.22でお知らせしましたが、22日の団交では、ようやく交渉の席に着いた学長と財務担当理事から国立大学を巡る政治的情勢と熊本大学の財務状況についての説明がなされたものの、使用者側から基本給切り下げの合理性と高度の必要性が具体的に示されることはなく、ただ「人勧に従わなければならない」としてその観念的な理由が述べられるにとどまりました。しかも、このわずか1時間20分の協議が、組合が賃金要求について具体的な根拠を含めて説明を行った最初の交渉であり、使用者側から経営状況に関する説明を得る初めての機会であったにもかかわらず、賃金要求の内容も含めて再検討したいという組合側の再交渉の求めに対し、使用者側は一方的に打ち切りを宣言しました。これは明白な誠実交渉義務違反行為であり、組合として改めて11月30日に再交渉を申し入れました。なお、弁護士の法的な判断によると、これまでの交渉における使用者側の不誠実な対応に加え、再交渉を拒否するとなれば、労働委員会の斡旋を得る要件を十分に満たすことになります。 さらに、祝日を挟んだ11月24日、使用者側は役員会において就業規則の改正案を決定し、翌日その内容をホームページに掲載しました。しかし、この問題についての過半数代表者との実質的な協議は11月末になってようやく実現しました。その結果、この就業規則改定が実質的な労働条件の切り下げであること、組合は使用者側との協議を求めていることから、複数の過半数代表者が、意見書の提出を見送りました。使用者側は、意見書提出が無くても就業規則を労基署に提出するつもりでしょうが、このような強硬手段で就業規則を改悪したとしても、それに基づいて賃金を下げることはできないということを自覚すべきです。 22日の団交で残された論点 1.今年度の熊本大学の経営状態についての説明がなされていない。 就業規則の不利益変更によって賃金などの重要な労働条件を切り下げるためには、その内容について高度の必要性に基づいた合理性がなくてはいけません。しかし、高度の必要性を判断するために重要な今年度の経営状況に関する資料は一切示されていません。昨年度と今年度の当初予算の比較だけではなく、中間的な経営状況についても分かる範囲で数値をもって示すべきです。なお、人件費について当初予算より7億円上回る見通しとの説明がありましたが、 昨年度の人件費の決算額 今年度の人件費の予算額 7億円増えた要因(定量的な分析を含めて) について数値を示した上で説明すべきです。 2.基本給の0.3%切り下げについての高度の必要性について経営状況に基づいた説明をすべきである。 1月から3月まで、基本給の0.3%切り下げによって浮く経費はわずか1000万円です。熊本大学の予算規模(決算報告書では431億円)からいって、就業規則の一方的切り下げによって浮かせなくてはならない金額とは到底思えません。 3.事務・技術職員のラスパイレス指数87.7 の説明をすべきである。 熊本大学職員の賃金水準がどのレベルかを確認しておくことは今後の賃金交渉において最も重要なことです。人事院勧告説明会や11月14日の団交において総務部長が説明したことは、調整手当が支給されていないこと、標準職務表上の位置付けが低いこと、異動後1年以内の課長等が含まれていないことの3点でした。しかし今回示された数字は、調整手当非支給地との比較です。調整手当は影響しませんし、管区機関以上の在職者も一部に限られます。使用者側は、国家公務員平均の9割以下の賃金水準であることを認めるべきです。 4.組合要求について,特にその根拠となる見解について意見を表明すべきである。 組合の主張は、国立大学の法人化によって国立大学法人職員が官民比較の官から除かれたため、そこから出される勧告に準拠すれば、国立大学法人職員の給与水準と社会一般の情勢である民間の給与水準の格差は広がってしまうというものです。簡単に数字をあげて補足しましょう。 2005年度勧告 官382092 民380703 -0.36% 2004年度勧告 官381113 民381152 0.01% 2003年度勧告 官380815 民376745 -1.07% (行(一)のみ) 2002年度勧告 官386354 民378553 -2.03% (行(一)のみ) 注意して欲しいのは法人化前の2003年度の勧告と法人化後の2004年度の勧告です。2003年度約1%のマイナス勧告が出されたにもかかわらず、2004年度の公務員平均給与月額は約300円増加しました。一方この間、社会一般の情勢である民間の平均給与月額は4800円(約1.2%)増加しています。結果としてゼロ勧告となりましたが、このような結果が出た背景に国立大学が法人化されたことがあるのは明らかです。 論点が残されている以上、一方的な団交打ち切りは許されない 論点が残されたままの団交打ち切りは明らかに誠実交渉義務に反します。しかも問題になっているのは就業規則の不利益変更です。使用者側は今年度はマイナスにならないと主張していますが、退職金への影響、来年度以降に残される不利益を考えれば不利益変更であることは明らかです。就業規則の不利益変更をめぐる判例では「労働組合等との交渉の経緯」が不利益変更の合理性を判断する一要因として明示されています(第四銀行事件、最高裁1997年9月28日)。組合の要求を無視して就業規則の不利益変更と基本給の切り下げを強行すれば、それは明らかな労働法違反行為です。 |