2006.5.8 |
||
E-mail:ku-kyoso@union.kumamoto-u.ac.jp |
——「教員の個人活動評価」に関する質問書の回答から—— |
21名の部局長・教育研究評議会評議員から回答 周知のように,昨年10月6日の大学評価会議「教員の個人活動評価の見直しの考え方」の方針通り,3月23日に「熊本大学における教員の個人活動評価指針」が改正され,評価結果を給与(特別昇給,勤勉手当)に反映させたい考えを学長が同日の教育研究評議会で表明しました。『赤煉瓦』№48(2006.4.7)でお伝えした通り,我われ熊本大学教職員組合は,今後の団体交渉等の参考とするため,4月5日に部局長・教育研究評議会評議員へ質問書を提出しました。質問の内容は次の通りです。 大学評価会議「教員の個人活動評価の見直しの考え方」では,評価結果を給与(昇給,勤勉手当等)に反映させることを前提に,各教員が設定した目標の達成度を各部局長等が評価する方法が示されていますが,この方法で,客観性を保ちながら,教員の活動を正当に評価することが可能であると考えますか? 不安を感じられている場合は,不安の内容を具体的に記してください。 これまで21名の部局長・教育研究評議会評議員から回答をいただきました。新年度当初の忙しい時期にもかかわらず,多くの方が回答くださったことに,厚く御礼申し上げます。回答いただいたご意見は,団体交渉の貴重な資料として活用させていただきます。ここでは,いただいた回答の全体的な傾向と代表的な意見を紹介します。 支持と不安——意見は大きく分かれる 大学評価会議「教員の個人活動評価の見直しの考え方」・「熊本大学における教員の個人活動評価指針」に示された評価方法,また評価結果を給与に反映させることを支持する考えが見られる一方で,評価の客観性・公平性を確保することや評価結果を給与に反映することを明確に不安視する考えが見られ,意見は大きく分かれました。また,評価結果を給与に反映させることについては,今後も慎重に検討する必要があることを指摘する意見も見られ,多くの方が自らの責任の重さを自覚していました。
新たな評価制度についても対照的な意見 各教員が設定した目標の達成度を学部長等が評価するという新たな評価制度の大枠についても,“工夫次第によって客観的評価は可能”とする意見から,“学部長の能力に依存するので不安が残る”,“平成16年度に試行されたポイント制の方が客観性の点でいえば良い。ポイント制を各学部の実情に合ったより良いものにしていくべきではなかったか”といった新たな評価制度を疑問視する意見に大きく分かれました。また,どのような点を評価するのかという点に関して,個人の絶対評価ではなく,どれくらい努力したか・頑張ったかを評価するという意見が複数見られました。
研究面と教育面の評価方法 より具体的な研究面・教育面についての評価方法についても,ご意見をいただきました。それもまた,対照的なものです。研究面では,“大型科学研究費の取得,拠点形成研究やCOEのリーダーなど,第三者によって客観的に評価されている事項を評価すればよい”と学部長等の管轄を超えた事項を評価するという意見があれば,“専門性を考慮して学科・講座単位で実施要領をつくる必要ある”という意見もありました。教育面では,学生の授業アンケートの結果を重要なものとする意見があれば,“「授業改善のためのアンケート」の結果を評価の参考にするに止めるべき”という意見もありました。
各部局の「実施要領」の重要性 最も多かった意見は,“新たな評価制度の適否は各部局で作成する「実施要領」をどのようなものにするかにかかっている”というものでした。新たな評価制度を支持する方も,各部局の「実施要領」の重要性を指摘しています。
使用者側の説明努力を疑問視する意見,学内合意の必要性を指摘する意見も! 総じて,賛否は大きく分かれますが,評価結果を給与に反映させることに戸惑いながらも,自らの責任の重さを自覚しつつ,所属部局の「実施要領」をいかに作成するかに苦慮しているというのが全体的傾向です。 評価結果を給与に反映させることは,多くの方が憂慮しています。また,教育研究評議会でも評価結果を給与に反映させることの意味が共通認識となっているかどうかを疑問視し,学内合意の必要性を指摘する意見や,昨年来の給与問題について熊大使用者の説明努力を疑問視する意見も見られました。
部局の「実施要領」作成以前に不可欠なこと 評価結果を給与に反映するかどうかは,教育研究評議会で学長が考えを表明したに止まり,未だ正式には決定されていません。また,評価結果を給与に反映させることを盛り込んだ理由は,昨年の人事院勧告に準拠するためと説明されましたが,2005年12月15日の団体交渉では,人事院勧告に準拠する法的根拠はないことを学長自らが認めるに至っています。本学の中期計画でも,2006年度は「教員の人事評価制度の確立に併せ,賞与,給与等への評価結果の反映について検討する」と記されるに止まっており,今年度から実施する必然性はありません。そもそも,評価結果を給与(昇給,勤勉手当等)に反映させることを構想するのであれば,「教員の個人活動評価」の問題に盛り込む前に,昇給,勤勉手当を今後どのように運用していくかを明確にし,組合・過半数代表者から合意を得るように努めるべきです。今回の混乱,部局長・教育研究評議会評議員の憂慮の元凶は,熊大使用者がそうした努力をまったく怠ってきたことにあります。 部局長・教育研究評議会評議員の多くは,自らの部局の「実施要領」をどのように作成するかに苦慮しています。しかし,これまで紹介したように,給与に反映させることの是否,新たな評価制度の根本=各教員の目標の達成度を学部長等が評価する方法を是とするか否か,研究面については第三者によって客観的に評価されている事項(大型科研費の取得,拠点形成研究・COEのリーダー)のみを評価すればよいか,地道な活動を評価するのか,教育面については学生の授業アンケートの結果を活用するのか否か,など制度の大枠についてさえ意見が大きく分かれているのですから,全学共通の「実施要項」の段階で慎重に検討し,共通認識を確立していく必要があります。今後のスケジュールも,7月初めを目途に全学共通の実施要項を改正し,9月末までに部局の「実施要領」を改正するように変更され,全学共通の「実施要項」に議論を尽くす条件は改善されました。 我われ熊本大学教職員組合は,「教員の個人活動評価」について,まずは全学の共通理解を確立するよう慎重に検討することを強く要望します。 |