No.27
2006.12.15
熊本大学教職員組合
Tel.:096-342-3529 FAX:096-346-1247
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「助教」の職務内容、処遇、任期制適用の問題点!
—団体交渉報告・その2—
「最終案」をよく読んで、意見を提出しましょう!
 12月6日(水)16時から約2時間、2007年4月1日に施行される学校教育法の改定に伴う新しい教員組織のあり方について、団体交渉を行いました。出席者は組合側が四役・執行委員・書記局員・書記あわせて12名、使用者側が森人事・労務担当理事、本田総務部長、仲地人事課長ら14名でした。

新教員組織の学内審議スケジュールと団体交渉
 新しい教員組織のあり方については、周知のように、企画会議教員組織検討ワーキンググループ(座長:森光昭人事・労務担当理事)の「中間まとめ」について、9月から10月にかけて各部局から意見聴取がなされ、その後、同ワーキンググループは意見聴取を踏まえて「中間まとめ」を見直し、11月30日開催の企画会議で新たに「学校教育法等の改正に伴う検討(最終案)」(以下「最終案」)をまとめ、12月1日付けで各部局の長に通知しています。今後は12月22日までに各部局が「最終案」への意見を集約・提出し、来年1月開催の教育研究評議会及び役員会で最終審議がなされる予定となっています。
 これとならんで、各部局には来年4月1日以降任期制を導入する組織・職、助教の資格基準、助教の授業担当・教育・研究指導担当の範囲等を検討し、来年1月26日までに企画部に提出することが求められています。
 すでに組合は「中間まとめ」段階の10月30日に、「助教」の労働条件や任期制の導入について団体交渉を申し入れていましたが、12月6日の交渉は「最終案」の具体的な内容に即して行われました。団体交渉は再度12月19日にも行われる予定ですが、「最終案」の問題点を早く知っていただくために、6日に行われた1回目の交渉の内容を速報することにしました。
 以下、組合の意見(「最終案」の問題点)と使用者側の回答を記した上で、留意点を述べます。

「助教」の職務内容に全学基準を!
【組合の意見】
 職務内容の基準について。「最終案」は、「助教」の職務内容の基準は各部局において策定するとしているが、大学全体として最低限の基準を設定したうえで、各部局の多様性を認めるようにすべきである。その理由は、以下の通りである。
教養教育の負担、入試問題の作成、委員会の負担など大学全体としての基準がなければ混乱を生じる局面があること。
「助教」の職務は従来の研究専念型助手に相当すると見ることもできるという理解を文科省も示しており、若手研究者育成のためのポストとして自らの研究に十分従事できる条件を整備すること。
また、これを怠れば、講師と「助教」の差異が不分明となること。
 これに対して使用者側は、これらは今後の検討課題だと明言し、委員会負担は全学的に基準を設けた方が良く、具体的に検討すると答えました。組合は、職務内容の基準策定のすべてを各部局に委ねるならば、各部局に団体交渉を申し込むことになると伝えると、使用者側もこれを了解しました。

助教の資格基準は「大学設置基準」の規定から逸脱してはならない
【組合の意見】
 「助教」の資格基準について。各部局が策定する「助教」の資格基準は、いわゆる「事務助手」の方を除き、現職の助手がすべて「助教」に移行できるものとすべきである。「大学設置基準」第16条の2から大きく逸脱し、現状から掛け離れた基準(現状から掛け離れた学位や業績)を設けることがあってはならない。

 これに対して使用者側は、現在研究している助手に基準を合わせていくので、問題は生じないだろうという前提に立っていると述べ、研究に従事している実態のある者すべてが助教に移行できるとまでは言えない、研究実績もあるので、可能性としては基準に達しない人が出てくることがありうる、と述べました。    
使用者に求められているのは、問題が生じないという「前提に立つ」ことではなく、「助教」の資格基準が現在の助手のそれからかけ離れたものとならないよう、各部局に明確に通知することです。

助教になっても業務内容は変らない!? 使用者側は手当無しで授業を担当させようとしています!
【組合の意見】
 「助教」の処遇について。「最終案」は「助教」について「現在の助手の処遇をそのまま適用する」とするが、現在の助手よりも職務内容と責任が増えることからすれば、教育職(一)3級を適用することや大学院教育負担の有無にかかわらず調整額を設けるなど、賃金面で優遇すべきである。

これに対して人事・労務担当理事は次のように驚くべき回答を示しました。
「現助手が助教に移行しても、仕事内容は本質的に大きく変らない。それなのに給与だけ上げるのは理解が得られない。現在、表には出てないけれど授業をしている助手がいる。こういうことが慣習となって大学が動いてきた。今までは表に出ない形で授業を担当していた。今度はそれが表に出るだけで、そのレベルで仕事の負担は変らない。そういう実態は熊大だけではない。給与や手当の問題では厳しい判断をしないといけない」。
 従来の違法状態を公認し、「助教」を現助手の労働強化にしようというのです。けっして許されることではありません。

2007年4月以降採用「助教」への全学一律任期制適用案は撤廃されました!
【組合の意見】
 「最終案」には2007年4月1日以降採用の「助教」は「任期制ポストとして活用することを原則とするが、その判断については部局に委ねるものとする」とあるが、「原則とする」とは具体的にどのようなことを意味するのか? 何も意味しないのであれば、削除するか、「望ましいが」程度の記述にすべきである。

これに対して人事・労務担当理事は、この文言は任期制の導入は最終的には部局の判断とするという意味であると述べるとともに、次のように回答しました。
「中期計画において、『各研究組織において任期制を検討し、教育研究にとって任期制が有効なものについては導入する』としており、「大学教員任期制法」に基く任期制は学問研究の特性に応じて導入するものと理解している」。
 全学一律の任期制適用案が撤廃されたのは、「中間まとめ」に各部局を通じて多くの反対意見が提出されたことと、組合の主張
『赤煉瓦』№22、10月25日、参照)の成果です。さらに今回の交渉における「学問分野の特性に応じて導入する」という担当理事の発言は,「大学教員任期制法」を正確に理解したものです。この理解を実現するためには,各部局で来年度以降採用の「助教」ポストに任期制を導入するかどうかを判断する際に,学科・課程・講座・分野等の部局内の各教育研究組織での検討結果を踏まえることが不可欠になります。

【組合の意見】
 同一の職務を行ないながら労働条件が大きく異なることは認められない。現職の助手が「助教」に移行した場合と2007年4月1日以降に任期付で採用された「助教」の場合とでは、職務内容はどのように異なるのか? 「大学教員任期制法」上の「助教」は従来の研究専念型助手に相当するものという理解を文科省が示しており、「助教」に任期制を導入する場合は、従来の研究専念型助手と同等の研究条件を準備しなければならない。

 これに対して使用者側は、職務内容が同じなら任期は付けられなくなる、大学としては任期付「助教」の研究条件をより良くすることが大きな課題だ、と答えました。また、組合が、「助教」に任期制を導入する部局があれば、その部局に団体交渉を申し入れることを通告すると、使用者側はこれを了承しました。
人事・労務担当理事の説明によれば、「中間まとめ」では5年任期満了後の審査に合格すればテニュアの「助教」とする案が示されていたが、ワーキンググループでの検討の結果、任期制はポスト、テニュアは個人につけるもので整合性が無いため、「最終案」ではテニュア制を削除したということです。また担当理事は、任期付とする場合の「助教」の任期を何年間とするか、再任は可か不可か、可の場合は何回まで可能か、という条件も部局で判断することである、と述べました。

医学部保健学科の助手内定者には任期制は適用されません!
 任期付助教に関する重大な問題の一つに、医学部保健学科ですでに助手として2007年4月採用内定を得ている方々が、任期付助教に移行されるのではないか、という心配がありました。これに関して「最終案」には、「平成19年3月31日までに選考が始まったものについては、従前の規定により選考が行われるもの」と記されています。組合が医学部保健学科の助手内定者を任期付の「助教」とはしないと理解してよいか、他の内定者についても同様かと質すと、人事・労務担当理事は任期付とはしないと明言しました。

「新助手」は研究費の配分が無い職種になります!
 「新助手」については、「中間まとめ」では新たな採用はしないとしていましたが、「最終案」ではそれが変更されています。その理由について人事・労務担当理事は、今後も「新助手」を採用したいという部局の希望があったためだと述べました。

【組合の意見】
 「助教」と「新助手」の予算配分はどのようにするのか? 予算配分の面でも明らかなように、「新助手」と現在の助手とはまったく異なることを周知すべきである。

 これに対して使用者側は、「新助手」は教育研究の補助業務に従事するのであり、「助教」とは違って研究費の配分がない。この点を明確にする必要があると述べました。
 また、教務職員には現行の助手と同等の勤務実態があるのに現状のままとしたのはなぜか、本人が「新助手」を希望した場合はどうするのか、という組合の問いに対して、人事・労務担当理事は、時間的制約で今回は盛り込むことが出来なかった。教務職員のままとして、本人の希望をとることはない、と回答しました。
 「新助手」には任期制を導入すべきではない、という組合の意見に対しては、担当理事は、新助手に任期制を入れるかどうかは部局の判断による、と回答しました。

既存の任期制の問題点については別途交渉
【組合の意見】
 「最終案」でも「流動性向上による多様な人材確保等の観点から」としているにもかかわらず、定年まで無際限に再任可とするのは、任期制導入の根拠と明らかに矛盾する。定年まで無際限に再任可とするならば、任期を外したらどうか? そもそも、文科省は定年まで無際限に再任可とする任期制を認めているのか?

 これに対して使用者側は、明確な回答を示すことはできませんでした。組合は別途交渉することを要求し、使用者側も認めました。

【組合の意見】
 任期制導入の正式決定=規則改正前に教員公募を行なっている熊大の現状は重大な問題であり、今後改善すべきである。2007年4月1日以降に「助教」を任期付とする場合も同様である。

 この点は、熊大の任期制導入手続き上の重大は瑕疵であり、組合の度重なる指摘にもかかわらず、使用者側は同じ過ちを繰り返してきました。来年度採用の「助教」に任期制を適用する際には、組織決定上の正当な手続きがとられなければなりません。だから組合はこの点を今回の交渉で要求したのです。これに対して総務部長が、「今回の交渉内容とは直接的に関係ない」と発言して交渉を打ち切りましたが、組合が別途交渉を求めると、これを了承しました。
 組合はこの違法行為を止めさせて使用者集団に正常な組織運営を行わせるために、今後とも断固とした態度で交渉を継続してゆきます。

外国人教師の後任ポストの任期制について検討をすすめよ
【組合の意見】
 外国人教師の任期制について「最終案」で言及がないのはなぜか? このポストの任期制の運用方法について「見直しを含めて検討する」期限は10月までと3月15日の交渉で答えていたが、どうなったのか? 遅れている理由は何か?

 これに対して使用者側は、「最終案」は「助教」「新助手」を中心に検討したため、外国人教師は助教授なので准教授になるので検討していない、人事異動があって遅れていることは確かだが、10月に着任した新総務部長が引き継いで、ワーキンググループとは切り離して検討している、と回答しました。

「最終案」をよく読んで、意見を提出してください!
 この「最終案」は「中間まとめ」に比べれば、各部局の意見に配慮し、全学一律の制度設計ではなく、各学部等の実情にあった運営をしていこうとする点で、一定の評価が可能です。                          
 しかし、この案には「助教」の職務内容の最低基準が定められていないために、大きな労働強化を防止する全学制度的な保障がありません。さらに、「助教」になれば業務の質と責任が明らかに増すのに処遇が基本的に従来の助手のままであることは、現助手の労働条件の不利益変更の可能性をはらんでおり、大きな問題です。また、各部局が定める「助教」の資格基準も、現状からかけ離れた学位や業績を要求するものであってはなりません
 「新助手」は研究教育経費の配分を受けることができない職種となります。現助手が「助教」となるか「新助手」なるかの希望を部局長等が聴取する際には、このことが周知される必要があります。
 任期制については、12月1日付けで企画会議から各部局長に下ろされた通知文書は、2007年4月1日以降採用の「助教」への任期制導入の可否を部局一律で判断するかのような印象を与えます。しかし,「学問研究の特性に応じて導入する」という人事・労務担当理事が交渉で示した理解を実現するには,各部局での任期制導入の適否の判断は学科・課程・講座・分野等の各教育研究組織での検討結果を踏まえることが必要です。これこそが「大学教員任期制法」の趣旨に適った決定方法なのです。人事・労務担当理事は、この点を文書での通達等の手段でもって各部局の長に徹底させる必要があります。
 ちなみに、すでに医学部保健学科は、2007年4月1日以降採用の「助教」に任期制は適用しない、という組織決定を行っています。
 また、「中間まとめ」に示されていた任期制「テニュア制度」が「最終案」では外されている点にも注意が必要です。
 「最終案」はあくまで企画会議でまとめた「案」であって決定した規則ではありません。組合は12月19日の交渉でも引き続きこれらの点を指摘し、人事・労務担当理事に適切な対応をとるよう要求しますが、皆さんも「最終案」をよく読んで、各部局を通じて改善の意見を提出してください。

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