No.19
2009.1.13
熊本大学教職員組合
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団体交渉報告:報奨金は出せても
パートのボーナスは出せない!?

 例年、人事院勧告に基づく公務員の制度改革を受けて、熊本大学でも就業規則変更が行われています。今回は賃金面では見るべきものはありませんが、勤務時間の7時間45分への短縮という内容を含んでおり、またパートタイム労働法改正に伴う、非常勤職員の給与についての人事院指針が出されたこともあって、勤務時間と有期雇用職員等の待遇面を中心に、1月28日に団体交渉を行いました。このニュースでは団交での主な議論を紹介します。組合要求の詳しい内容については赤煉瓦12号をご覧ください。

 項目1  不利益緩和措置の一環として勤務時間を7時間30分に短縮することを求める。
−7時間30分への短縮は拒否、しかし使用者側も不利益があることは否定できず。

 組合はまず、2006年度の給与構造見直しで教職員が賃金上の不利益(平均4.8%の基本給切り下げ)を受けていることの確認を求めました。これに対して理事は現給保障をし教職員に理解をしてもらえたとして「もう済んだこと」との認識を示しました。組合は賃金引下げの合理的説明はまったく受けていないとして、その認識に反論するとともに、不利益があることの確認を改めて求めました。理事は「不利益緩和措置の議論を整理したい」と述べ、今後の検討を約束しました。
 しかし、7時間30分という組合要求については、国民の理解が得られないなどの理由で拒否されています。組合はこれ以上議論を続けても接点は無いと判断し、決裂という形で決着させました。ただし、人事院勧告に示された7時間45分にすることについても「部局へも意見聴取しており、その結果判明した課題について対応策を検討している。」という回答にとどまっています。なお一部部局で「教育職員・技術職員については検討中」というメールが回されましたが、調査は全教職員を視野に入れて行っているとの表明がありました。

 項目3  パートタイム職員に対して期末手当を支給することを求める。
−報奨金や渡り官僚の異動補償には金は出せても、パートのボーナスは出せない。

 回答は「競争的資金で雇用されている人もいるので一律に支給基準を作ることはできない。しかし、人事院の指針を踏まえ、競争的資金等の積算根拠について今後の動きを見ながら対応していきたい。」というものでした。
 組合はまず「一律に支給基準を作ることはできない」とする無責任な姿勢を批判しました。パートタイム職員が外部資金等を含めた多様な財源で雇用されていることは事実です。しかし、それは出さないための口実にしかなりません。パートタイム職員にも期末手当を支給するよう努めなさいという人事院の指針を尊重する責任は末端の学部・学科・講座ではなく大学自身にあるはずです。日ごろ人事院の勧告は尊重せざるを得ないと言って、経営上の明確な理由も示さないまま賃金を切り下げておきながら、このような無責任は許されるはずがありません。
 また「競争的資金等の積算根拠」を理由にあげたことも問題です。外部資金の中に期末手当の原資を期待しているわけで極めて無責任な姿勢といえます。組合が批判を続けている特別都市手当(特に渡りの異動補償)の改善は、運営費交付金等の積算根拠に入りませんがすでに実施を決めているのですから。
 組合は科研費から期末手当は出せないとの説明に対し、科研費の間接経費を期末手当の財源に当てられるはずだと主張しましたが理事は答えられませんでした。間接経費からは問題の報奨金が出されています。理事の中にも報奨金を受け取った人がいます。報奨金は出せてもパートタイム職員のボーナスは出せないとする使用者側の姿勢を批判するとともに、改めて大学の責任でパートタイム職員の期末手当を支給するように要求しました。最終的に理事も再度検討することを約束しました。

項目2 改正パートタイム労働法の趣旨に則り、長期にわたって継続的に雇用している職員について、正規雇用に切り替えることも含めて、有期雇用職員を正規職員として採用するルートの確立を求める。

 まず、1月に行われた有期雇用職員を対象にした採用試験の概要の説明を受けました。実施の理由にはパートタイム労働法の改正があり、「今年一回だけのことではない」と今後の継続的実施を約束しました。ただし年間どれくらいの採用を行うかとの質問に対しては若干名との答えに止まりました。
 もう一つ、特定有期雇用職員(病院の看護師、技師など)の正職員化の最大の障害になっている更新は4回までという制限について議論しました。このような更新回数制限の根拠について、理事は「民法で5年となっている」と述べましたが、組合は双方の合意で延長が可能であることを主張しました。理事は反論できず、5年に制限する明確な根拠がないことが浮き彫りになりました。
 特定有期雇用職員の5年雇い止め問題は病院の経営側からも深刻な問題と受け止められています。このままではME機器センターでは、2011年3月末で半数の技師さんが雇い止めになります。医療技術職員は技術の修得に2年程度かかるので、5年で雇い止めにされたら優秀な人の確保や技術の継承は不可能です。組合はこのような事情を訴えるとともに、正職員化を希望するがまずは5年の枠を外して欲しいと要求しました。特定有期雇用職員の制度は2006年度から導入された制度で、更新4回の制限による最初の雇い止めは2011年3月末に生じます。この問題については今後も継続して交渉を行い、2009年度中に具体的対応策をまとめることで基本的に合意しました。

 なお、非常勤講師の通勤手当の問題と、勤務時間短縮に伴うパートタイム職員の時間給切り上げの問題も取り上げましたが、回答はいずれも検討中とのことでした。このニュースでは省略します。

相変わらず検討中ばかりの回答、使用者側は2月中に再交渉を行え
 今回の交渉は基本的に4月からの就業規則変更を見込んで行ったものです。あと2ヶ月で最終的結論を出す必要があるのに、組合への回答はほとんどが「検討中」というものでした。
 無論、団交の議論は就業規則変更内容に反映されるべきであり、組合の意見を聞いてから決定するという姿勢であれば評価します。ただし、その場合でも検討した内容についての団交は必要です。労働条件は使用者が一方的に決めるものではなく、組合の意見は聞いたのだから後はこちらで決めますよというものではありません。
 今回の交渉で検討中とされた事項は、すべて団交継続中の事項であり、再交渉を経た後でないと就業規則の変更手続き(過半数代表者の意見聴取を含む)を行うべきではありません。日程を考えれば2月中の再交渉は不可欠です。使用者側の迅速な対応を求めます。


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