2010.3.26 |
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現行の休日振替運用方法を 使用者はいつまで続けるのか! |
休日に労働する場合に休日振替を行うという慣習は、国家公務員時代から広く行われて 休日労働と割増賃金 きました。休日労働には休日振替するものと思い込んでいる人もいるかもしれません。一方、「振替えたくても振替日が取れない」「振替日をとっても結局休めない」「振替伺を出さないと理由書を書けと言われるが1ヶ月の事情を書くなんて無理」といった不満の声は相変わらずです。しかし、そもそもこうした点については勤務時間管理の観点からもおかしな点があります。
今回のニュースでは、労働基準法・就業規則における休日労働の扱いと休日振替についての解説と、休日振替に対する組合の基本的考え方をお知らせします。今年の入学式は日曜日に行われるため、新年度早々に使用者から休日振替手続きを求められる方も多いと思います。ぜひ、このニュースの内容を参考にして下さい。 休日振替しなくてはならない予算上の理由は無い 公務員時代は超勤手当の枠が国の予算によって決められていました。どんなに残業をしようが予算が無くなれば手当は支給されませんでした。そのため、土・日・祝の業務をすべて休日労働にしてしまうと超勤手当の予算が不足するという状況がありました。休日振替を行い休日給の支給を縮減してもなお、一部部署では超勤手当をカットせざるを得ない状況が続いていました。賃金不払い残業は常態化していました。 この事情は法人化によって大きく変化しました。年度当初に超勤手当の予算を決めたとしても、それはあくまで大学の事情で設けた枠に過ぎません。予算が無いからといって超勤手当をカットしたら労基法違反になります。実際、超勤を申告したのに手当が支給されない(b)という話は聞かなくなりました。休日労働に休日給を支給するという民間の常識を大学でも徹底できる条件が整ったのです。 休日労働と割増賃金 熊本大学の就業規則では、土曜、日曜、祝日を休日とすることが定められています。労基法は事業主に対し週1日の休日を確保するよう求めるとともに、それができない場合は35%以上の割増賃金を支給することを求めています。週1日ですので、労基法上、土曜日のみに仕事をさせる場合には35%の割増賃金は必要ありません。しかし、熊本大学の就業規則では休日すべてを35%割増賃金の対象としています。労基法の基準よりも分かりやすい運用方式といえます。 勤務する日が労働日であるか休日であるかによって勤務時間管理の方法はまったく異なってきます。労働日であれば勤務時間は就業規則で定められているように原則として8時30分から17時15分までです。8時30分に出勤しなければ遅刻です(c)。一方、休日労働の場合は働いた時間分だけ賃金が支払われるので、業務に合わせて13時から16時まで勤務するということも可能です。この場合3時間分の賃金が35%の割増率で支給されます。 大学教員については裁量労働制が適用されているので、労働日であれば実際の勤務時間に関わらず1日の勤務時間は7時間45分とみなされます。ただし、休日に働く場合はこの勤務時間を7時間45分とみなす規定は適用されません。熊本大学の裁量労働制労使協定では、休日に行われた拘束的業務について休日給を支給する(d)ことを定めています。 休日振替の意味と熊本大学での扱い このように休日と労働日では勤務時間の扱いがまったく異なります。ですから休日と労働日の区別は明確になされなければなりません。そこで問題になるのが休日振替の制度です。 誤解している人も多いかもしれませんが、休日振替とは、休日に労働した代わりに休暇を与えるという制度ではありません。労働日と休日を入れ替えるという制度です。例えば4月4日(日)に業務があるため、振替日を4月6日(火)に取ったとします。その場合、4月4日が労働日、4月6日が休日ということになります。4月4日の業務は労働日の業務ということになり、休日労働にはならないので休日給の支給はありません。一方、4月6日は休暇ではなく休日ですから、この日に業務を行えば休日労働となり、大学には休日給支給の義務が生じます。せっかく与えられた休暇が使えなかったというのではなく、休日労働を行ったということになるのです。 したがって、休日振替では、使用者は振り替えられる日の前日まで(上記の例では実質的に4月2日(金)まで)に振替日を含めて命じなくてはならないのです。そうしなければ労働日と休日の区別が曖昧になってしまうからです。ところが、熊本大学では公務員時代の慣習のまま、振替伺を提出しなさいという指示しかありません。これでは振替日が指定されていないので、振替命令とはなりません。しかも書式は職員の都合で休日と労働日を振替えるという体裁をとっています。後でも述べますが休日振替は職員にとって基本的に不利な扱いであり、職員の側から振替えて下さいということはあり得ません。 さらに振替伺の書類を出さないまま休日に労働を行った場合は、休日振替命令は成立していませんので、休日労働として扱う以外に方法はありません。事後に振替日を決めて休日労働で無かったことにするのはできないのです。一部の職場で事後に振替伺の提出を求められる事例がありますが、これは無効です。また振替伺を提出しない教職員に対して、振替えられない理由書を求められていますが、理由書が提出されないことをもって休日労働が行われなかったとすることもできません。すべての責任は事前に振替日を含めて休日振替命令を出さなかった使用者側にあります。つまり、理由書は勤務時間管理上まったく意味を持たないのです。1ヶ月にわたって一日ごとに振り替えられない理由を書くという書式は早急に廃止すべきだと組合は考えます。 よく似た制度に代休制度があります。4月4日に休日労働しその代わりに4月6日に代休をもらったとします。この場合、振替は行われていないので4月4日は休日労働です。休日給は135%ですが、4月6日に代休を取ったので割増分35%のみが賃金として支給されます。4月4日に働いて、4月6日に休むという形態は同じなのに、休日振替の場合と35%分の賃金の差が生じます。休日振替は労働者にとって基本的に不利な制度といえます。ただし、熊本大学では代休は制度化されていません。また、仮に制度化されていたとしても、年次休暇が余っている状況で代休を取るというのは考え難いことです。 なお、振替日が同一週内に取れなかった場合、例えば4月4日の業務に対して4月13日に振替日をとった場合は、4月4日の勤務については25%の割増賃金が支給されることになっています。これは4月4日が労働日になることによってその週(土曜日から金曜日まで)の所定労働日が6日になり週所定労働時間が40時間を超えるためです。労基法の基準では超えた時間数(この場合は6時間30分)について25%の割増賃金を支払えばよいのですが、熊本大学の就業規則では、一日の労働時間(7時間45分)について25%の割増賃金を支払うことになっています。 休日振替に組合が反対する理由 さて、休日振替が労働者にとって不利な制度であることは理解していただけたでしょうか。他にも組合が休日振替に反対する理由があります。 1.教職員の勤務上の問題 振替日は大学にとっての休業日ではないので大学の業務は通常通り進みます。そのため勤務上のいくつかの問題が生じます。
振替日を決めるための手続は休日の前までに行う必要があります。振替伺を提出しなかった職員については休日労働として時間管理するとともに理由書の提出を求めています。振替伺を出した職員については同一週内か否かをチェックするとともに振替日の労働には休日労働として管理する必要が生じます。職員ごとに扱いが変わるので担当する事務職員の負担は煩雑です。しかし、一律に休日労働として扱えば、個々の労働時間を管理するだけで済むことになります。 3.同じ業務について振替の仕方で手当が変わってしまうこと 振替が行われ、1週間以内に振替日をとれば手当は支給されません。同月内なら25%の割増賃金が必要になります。振替えなければ業務の時間について休日給(時間給と35%の割増賃金)が必要になります。運用の仕方で手当額は大きく変わります。『赤煉瓦』No.27(2010.1.5)で試算結果を出していますが、ここでは入試手当が含まれているので格差は緩和されています。実際の格差はもっと大きくなるのです。 このように矛盾を多く抱えた運用をいつまでも続けるべきではありません。休日振替は大学の事情で労働日と休業日(大学業務の停止する日)を入れ替えるような場合(附属学校の運動会と代休などが考えられます)に限定すべきです。なお、休日に働いたら休みが欲しいという方もいらっしゃるでしょう。その場合、まずは年休の取得を活用してください。年休取得率のアップは社会的要請でもあります。年休がない人に対しては、代休を制度化すべきです。使用者側は、このような可能性をすべて考慮したうえで早急に改善を図るべきです。 団体交渉での議論 組合は賃金引下げの代償措置の一つとして「休日労働には休日給を支給すること」を要求しました。この要求は以前から出してきたものですが、賃金引下げ問題を機会に是非実現したいと考え、代償措置要求の一つに取り込みました。休日振替に関する使用者側の交渉時の発言をまとめましょう。
ニュースの冒頭で述べたことに戻りますが、熊本大学における休日振替の運用は公務員時代からの悪弊です。公務員時代には予算の枠というやむを得ない事情がありました。しかし、予算の枠はもはや意味を持ちません。組合は土・日・祝の業務は振替を行わず休日労働として扱うことを要求します。 入試手当と休日給の併給禁止規定について 熊本大学の就業規則では、時間外勤務手当や休日給などが支給される場合は入試手当を支給しない(g)としています。『赤煉瓦』No.27でこの点を指摘したところ、「入試手当は入試業務という特殊業務に対する手当である。休日給は休日に働いたことに対する手当なので趣旨が異なり併給禁止規定は問題だ」との意見が寄せられました。組合も併給禁止規定は廃止すべきと考えています。ただし、現状の休日振替の扱いのまま併給禁止規定を無くすと、振替の有無による手当額の違いが大きくなり過ぎます。同一業務について支給される手当が変わってしまうことは重大な問題であり、まずは休日振替の廃止に重点を置き、次の段階で併給禁止規定の廃止を求めて行きます。 なお、教員免許更新講習手当についても休日給との併給禁止規定があります。この手当は1時間8000円と休日給より高いので、休日労働にしてしまうと担当教員は休日(振替日)をもらえないだけではなく手当面でも大きな不利益を受けます。このような不合理は早急に改善されるべきです。この扱いも含めて使用者側と交渉をしていきます。 |