2010.3.30 |
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教員ポストは原則として任期制" 前学長の見解にも反した 人事労務担当理事の恣意的解釈!! ——迷走する熊本大学の教員任期制(2) |
2008年度の『赤煉瓦』№32「これが教員人事? 研究分野も問わず,『教育義務』がないかもしれない教員人事なんて——迷走する熊本大学の教員任期制(1)」(2009.5.13)では,「国際化推進センター」での任期制導入にあたっても手続きに大きな不備があったこと,2009年4月24日の団体交渉で熊大使用者にその問題点を質問したところ"後日,調べて回答する"と約束したことなどをお伝えしました。その後,2009年6月9日に使用者から回答がありました。しかし,その説明内容は,全学の運営,「国際化推進センター」の運営に混乱をまねくものです。ここでは,常軌を逸した熊大使用者の回答内容とその問題点についてお伝えします。 なお,本来もっと早くに組合員・学内構成員へお伝えすべきにもかかわらず,諸般の事情のために遅延し年を越してしまったことをお詫びいたします。 組合の主張の確認 2008年度の『赤煉瓦』№32で組合が指摘した「国際化推進センター」国際交流支援部門の教授ポストへの任期制導入手続きの不備とは,次の二点です。 組合が(1)の不備を指摘した根拠を改めて確認しておきましょう。組合が根拠としたのは,2008年10月23日開催の教育研究評議会の審議を経た「全学の国際化推進の仕組みについて」の3.(8)その他の項目にある次の記載です。 (a)下線部が示す通り,「国際化推進センター」の専任教員は任期制としないのが原則であり,(b)下線部が示す通り,総合企画会議・「人事委員会」等の審議を経て「国際化推進センター」を強化するために全学流用定員ポストを配置して任期制とすることが有効であると学長が判断した場合,例外として任期制を導入することができる,というのが全学で確認された「国際化推進センター」の運営ルールです。しかし,2009年2月26日の「人事委員会」では,任期制を導入しない原則を越えて例外規定を適用する必要性=「国際化推進センター」の強化のためにどのような意味で任期制が必要であるかが一切審議されていません(議事要旨には一切記されておらず,「人事委員会」のメンバーも一切審議していないと組合の取材に答えています)。したがって,全学的に確認された「国際化推進センター」の運営ルールに違反して任期制導入が図られたというのが,組合の指摘です。 呆れるばかりの恣意的解釈を披瀝した森人事労務担当理事 "4月1日付で人事異動があり,「人事委員会」で審議した時の方々が退職したり異動したりしていることから,私の方で関係者への事情聴取をしたり調査を行ないまして,皆さんに説明を行なうわけです"。(下線は引用者)これは,2009年6月9日,組合への回答の冒頭で森理事が行なった発言です(人事労務担当理事であるにもかかわらず「人事委員会」のメンバーではなかった森理事は,自ら行なった事情聴取・調査をもとに回答に臨んだというのです)。 まず組合が指摘した不備の(1)について,森理事は次のように回答しました。 "「全学の国際化推進の仕組みについて」の記載の表現を正確に理解していただくために,背景を含めて説明したい。旧留学生センター専任教員については,これまでの雇用条件が任期制を適用しない職であったこと,またセンター教員の業務として留学生の語学教育・国際交流に関する支援は任期制導入になじまないと説明したものであります。この「センター教員」とは,留学生センター教員のことです。この方々が異動するにあたり,新たに任期を付けることは組織上問題があるので行なわない。仕事の性質上から考えても,任期制はなじまないということを説明している"上記の通り,専任教員は任期制としないのが「国際化推進センター」の原則であると組合が解釈した「全学の国際化推進の仕組みについて」の引用の(a)下線部の記載は,旧留学生センターの教員に関するものであり,原則を規定したものではないというのが森理事の主張です。 これに基づいて,引用の(b)下線部について森理事は次のように説明しました。 "学長判断によりこの組織を強化するために職を特定して全学流用定員ポストを配置する場合には,改めてその職の特性をふまえて任期制の是非について検討する必要があることを明記したもので,例外規定にはなりません"つまりは,引用の(a)下線部を原則規定として,(b)下線部を例外規定として解釈した組合の理解は誤りで,(a)下線部は旧留学生センターの教員を任期制としないことを規定しただけのものであるというのです。 読者の皆さんは,「全学の国際化推進の仕組みについて」からの引用文を確認して,どのように思われるでしょうか? 森理事が説明したのは恣意的解釈,それにさえも値しないと感じられたのではないかと思います。世間の常識から,また日本語の常識を身につけた方の見地からすれば,(a)下線部は原則が述べられており,「国際化推進センターは,……」の最初の記載は配置換えである理由から,「また,センター教員の業務は,……」の記載は業務面の理由から,「国際化推進センター」の専任教員は任期制としない根拠が規定されていると解釈するのが自然です。 組合は,この理解を使用者に示しました。すると,森理事は"「人事委員会」の方々の考え方をすっと理解できた。あなた方の理解を100%排除するわけではないが,背景を追っていくと私の見方がまっとうであると自信をもっている"と答えました(森理事は上記の解釈を「人事委員会」のものであるというのです。「人事委員会」の方々はどのように思われるのでしょうか?)。 "議事要旨に記載がなくても「人事委員会」で検討した" ——「大学教員任期制法」の趣旨を曲解している森理事—— 組合が指摘した(2)の不備については,"議事要旨には任期制とする結論しか記載していないが,確認したところ,2009年2月26日の「人事委員会」において任期制とする理由は十分に審議されたと考えている"と森理事は回答しました。任期制を導入する理由としては,①「国際化推進センター」の教育研究組織としての特性,②多様な人材の確保の2点をあげ,次のように説明しました。 森理事の説明を一言にまとめれば,"「国際化推進センター」国際交流支援部門の教授ポストは,「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」(「大学教員任期制法」第4条第1項第1号)であり,この職の業務を担う方の専門研究はどのような分野でも可能であるために「研究分野は特に指定しない」と2009年2月26日の「人事委員会」が判断した"というものです。 本当に「国際化推進センター」国際交流支援部門の教授ポストは,「多様な人材の確保が特に求められる」べきものなのでしょうか? 公募要領の「3.職務内容等」の項目には,「(1)国際的な情報発信や国内外の関係機関との連携を含む本学の様々な国際交流事業の企画・立案・実施,(2)国際化推進センターの国際交流支援部門の管理運営,(3)本学での国際交流に関する支援」があげられています。いうまでもなく,国際交流事業・支援には学外との信頼関係を築くことが不可欠であり,窓口となる方への信頼と経験が成否の重要な要素となります。そうした業務を担う方が任期制によって,コロコロと入れ替わることが,全学の共同教育研究利用施設のポストとして有効であるとはとても考えられません。しかも,「国際交流に関する支援を主たる業務」であることは,森理事自身が旧留学生センター教員を任期制としない理由の一つとしたものに他ならないのですから。 組合はこれらのことを指摘して"「人事委員会」はどのように判断したのか?"と質すと,森理事は一言も答えることができませんでした。 "どのような専門分野の方でも可能なポストであるために「研究分野は特に指定しない」"という見解(森理事が「人事委員会」の判断とするもの)は,「大学教員任期制法」の趣旨にまったく反したものです。「大学教員任期制法」に基づく任期制は,あくまでも大学の教育研究の活性化のためのものです。任期制導入によって「多様な人材」が入れ替わり,その職の教育研究に役立つようにするもので,それに適した職であるか否か専門の教育研究の見地から大学が自主的に判断し,役立つと判断した場合に任期制を導入してもよいというのが「大学教員任期制法」の趣旨です。森理事の見解は,これとはまったく掛け離れた,むしろ本末顛倒も甚だしいものです。「大学教員任期制法」は人が入れ替わってその職の教育研究の活性化が図られる専門性の場合に任期制導入を認めるのに対して,教員本来の専門の教育研究以外の業務を担うがゆえに専門研究はどのような分野でもよいと判断したというのですから。 組合が"森理事の見解は,教員本来の教育研究以外の業務を担ってもらうために任期制とするというものであり,教育研究の活性化という「大学教員任期制法」の趣旨にはまったく合っていないではないか"と質すと,森理事は"微妙なところ","研究業績のある人を配置する"といった曖昧,かつ意味不明な回答をするのがやっとでした。"微妙なところ"というのは誤魔化し以外の何ものでもありません(事実と論理に基づくべき大学人として恥ずべきものです)が,"研究業績のある人を配置する"という発言も,その職に就いた後で本人の専門の教育研究で成果をより発揮できるようにするのが「大学教員任期制法」の任期制導入の趣旨であることを理解していないと言わざるを得ないものです。 なお,念のため記せば,大学人以外からもふさわしい方を迎え入れる可能性がある職であることをもって,「国際化推進センター」国際交流支援部門の教授ポストを「多様な人材の確保が特に求められる」職と判断したという森理事の見解も,「大学教員任期制法」の趣旨を曲解したものです。「大学教員任期制法」任期制に適したものとして謳う「多様な人材の確保」とは,人が入れ替わることによって,当該教育研究組織,また本人たちの教育研究の成果が従来以上にあがる(「活性化」が図られる)職についてのものであり,けっして「採用範囲を拡げる」といった瑣末なものにとどまることではありません。 "「国際化推進センター」国際交流支援部門の教員ポストは任期制が原則" —— 前学長の見解にも反した森理事の見解—— 以上のように,森理事は回答に窮しつつも思弁を塗り重ねた回答に終始しました。使用者からの回答に臨んだ組合役員は,呆れるばかりでしたが,それによって深刻なのは,全学で確認されている「国際化推進センター」の運営ルールが反故にされていることです。 「国際化推進センター」の専任教員は任期制としないことを原則とすることが全学的に確認されているにもかかわらず,組合が指摘した不備(1)の回答によって,旧留学生センターの教員以外はそうではないというのですから。組合からの質問に対して森理事は次のように明言しました。 組合が指摘した不備(1)・(2)についての回答を併せれば,"旧留学生センター教員については任期制ではないが,国際交流支援部門の教員については任期制とするのが原則であるということですね"と確認すると,森理事は"そういうことです"と明言しました(ただし,その後に,森理事は"私はその委員会にいたわけではないんです。2月26日の議事要録に詳しく書いてない。なぜ任期制かと問われるので,私の考えを申し上げた"と曖昧な発言もしていますが)。 読者の皆さんも,驚愕されたことでしょう。全学的に確認されている「国際化推進センター」の運営ルール=専任教員は原則として任期制にはしないという(多くの部局でそのように報告されています)のは誤りだと言うのですから。しかも,森理事の見解で性質が悪いのは,この見解は2009年2月26日の「人事委員会」の判断であるとして,責任を「人事委員会」に負わせていることです(「人事委員会」のメンバーであった方はどのように感じるのでしょうか? また「国際化推進センター」長はどのようにして運営してゆくのでしょうか?)。 実は,森理事が示した見解は,「人事委員会」の主宰者であった前撝元学長の公式見解にも反したものです。2008年12月16日に行なわれた外国人教員(旧外国人教師の後任ポストの教員)の任期制に関する団体交渉において,前学長は次のように明言しました。 "今回,国際化推進センター等の案件が固まり,留学生センターの教員も含め任期を付けないということになり,今のような結論(労働基準法第14条適用の任期制を廃止すること)になった"(下線は引用者)「国際化推進センター」については"留学生センターの教員も含め任期を付けない"というのですから,「国際化推進センター」の専任教員は任期制としないのが原則であると前学長が認識していたことは明らかです(この団体交渉には森理事自身も列席していましたから,森理事は失念しているか,意図的に忘却しているかのいずれかです)。 もはや森理事が言い逃れするには,団体交渉の後,前学長が全学的に確認された「国際化推進センター」の運営ルールの認識を翻し,2009年2月26日の「人事委員会」で前学長のもとで新たな判断を行なった,と責任を前学長に負わせることしかないようです。 熊大使用者・管理者は人間の当たり前の感覚を恢復せよ!! 2008年度の『赤煉瓦』№32では,熊本大学の使用者は江口元学長の時代から自ら犯した過ちを率直に認めて正すことを最も苦手とする性癖をもっていることを指摘しましたが,この悪癖は谷口学長体制のもとでも森理事へ脈々と受け継がれているようです。過ちを隠すための嘘は,さらに嘘を重ねて混乱を極めることにしかならないことは,旧外国人教師の後任ポストへの任期制導入をはじめ,これまでの学内運営で明らかです。さすがに森理事も,前学長や「人事委員会」に責任を負わせることに後ろめたさを感じたのでしょうか,回答の冒頭では"事情聴取・調査をもとに説明する"と述べたにもかかわらず,最後には"本日は情報提供。ご質問がありましたので,私の方で調べ,私の考えもいろいろ申し上げ,憶測もたくさんあったと思います"(下線は引用者)といわざるを得ませんでした。 体面をばかりを気にする熊大使用者の悪癖によって迷惑をこうむるのは,学生・教職員です。何よりも,「国際化推進センター」国際交流支援部門の教授ポストに着任される方(2010年4月に着任予定)が気の毒です。このポストの業務は,自分の専門研究を犠牲にしてでも全学の国際交流支援に尽くさざるを得ないものです。そこに心機一転着任されても,自身の処遇(任期制)がお伝えしたような熊大使用者・管理者の無責任な運営によって決められていたことを知ることになるのですから。 熊本大学教職員組合は,熊大使用者・管理者に対して,悪癖を絶ち切り,過ちを犯したならば率直に認めて正すという人間として当たり前の感覚を一刻も早く取り戻すことを強く要望します。 発生医学研究センターでは……。 熊本大学で最も早く教員任期制を導入した発生医学研究センターでは,前年度以来,再任審査が行なわれ,これまでに教授2名の方,助教2名の方が再任不可の結果になっています。任期制の導入当初,発生研の管理者は,"首を切るための任期制ではない。人を育てるための任期制である"などと称していましたが,それとはかけ離れた任期制の厳しい現実が明白になっています。 |