No.51
2001.4.13
熊本大学教職員組合
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発生研任期制教員の再任審査に関するアンケートの解説

 アンケートの集計結果は「赤煉瓦No.50」ですでにお伝えしました。ここではその解説を行います。

アンケート回収率について

 発生医学研究センター(以下「発生研」と略)は学内共同利用教育研究施設となっていますが、昨年4月の改組前の遺伝発生医学研究施設は医学部附属の研究施設で、現在の発生研も本荘・九品寺地区にあります。また発生研の教授は医学部教授会所属となっています。この様に発生研は医学部の身近にある施設であり、医学部の教職員は任期制に関して他学部の教職員と比較して関心が高いのではないかと考えられます。そこで組合では医学部の教官(本荘・九品寺地区のセンター系の教官を含む)を対象にアンケートを実施しました。370通配布し約 11% である 41 通の回答が寄せられました。

回答者の分布について


 アンケートの最初に所属と職を聞きました(「1. あなたの所属は。」「2.あなたの職は。」)。集計結果の所属・職の分布は在職者の分布とほぼ一致しており、回答者に偏りはありませんでした。今回決まった「内規」は発生研の教員に適用されるものですが、発生研へは
26 名に配布し 2 名から回答がありました。

任期制への関心度・情報量について

 問 3, 4, 5 では任期制に関する一連の経緯を知っていたかどうか聞きました(「3.発生医学研究センターで任期制が導入されたのを知っていましたか。」「4.教職員組合は昨年 12月、任期制について発生研センター長・医学部長と話し合いの機会を持ちましたが、その事を知っていましたか。」「5.『内規』が医学部で審議されていたのを知っていましたか。」)。回答によると、発生研で任期制が導入された事さえ知らない人が40%近くもいました。また、組合がセンター長・学部長と話し合いをした事、「内規」が審議されていた事はどちらも約70%もの人が知りませんでした。この結果は、医学部の現状を端的に現しています。医学部では教授会に出席するのは教授と数名の助講会代表者のみであり、教官全員が出席する多くの他学部とは異なります。大学・学部の運営に関する情報が助教授以下には著しく欠乏しており、そのため更に無関心になってしまうという悪循環に陥っている様にも思えます。教官ひとりひとりが情報に敏感になる事も必要ですが、教授会ももっと積極的に情報を公開する必要があるのではないでしょうか。また、この様な状況の中で組合の役割も重要であり、今以上に情報収集や広報活動に努力する必要がある事を再認識しました。

「内規」の決定までの手続きについて

 すでに全国の多くの大学で教員の任期制が導入されていますが、それらの大学のほとんどで未だに再任の細則は定められていません。それに比べれば、熊大では比較的早期に再任手続きが明文化された事になり、この点ではある程度評価できます。

 しかし本来は、再任審査の方法を定めた規則はあらかじめ本人たちに提示され、それを元に任期制教員となる事に同意するかしないか判断してもらうべきです。今回の発生研の場合は、再任審査の方法に関して一切明文化されないまま任期付き任用が始まりました。ですから再任に関する規則が制定される際には、当事者の任期制教員がその規則でも良いと同意する必要があります。この様な考えに基づき、昨年12月のセンター長・医学部長との話し合いにおいて、組合は細則を決める際には発生研の教官の議論の場を設けるよう要請しました。それに対し医学部長からは、教授会で審議した後で発生研の当事者の教官の意見も聞くとの返事がありました。

 アンケートでは発生研の教官に対し「6.先の組合とセンター長・学部長との話し合いで、再任の規則を決める時には当事者である発生研の構成員の意見も聞くことになっていました。あなたの意見が表明できる機会がありましたか。」との質問をしました。発生研からの回答者2 名のうち、1 名はあった、もう 1名はなかったと答えています。ちなみにあったと答えた 1名は教授でした。構成員の意見を聞くというのは組合との約束ですから、きちんと履行されたのかどうか更に調査して確認する必要があります。

「内規」の内容について

 問 7, 8, 9 は「内規」の内容に関する質問でした(「7.『内規』で定められている業績評価委員会の構成についてどう思いますか。」「8.『内規』に定められている教授の再任審査手続きについてどう思いますか。」「9.『内規』に定められている教授以外の再任審査手続きについてどう思いますか。」)。各々の問に対して、賛成、反対、分からない、関心がない、の4 つから 1つを選択してもらい、具体的な意見を自由記述してもらいました。さらに問10では問 7, 8, 9 の枠にこだわらない意見を書いてもらいました(「10.その他『内規』について、任期制について、組合についてなど、ご意見をご自由にお書きください。」)。選択肢の部分の結果は次の通りです。
  賛 成 反 対 分から
ない
関心が
ない
無回答
問7.業績評価委員会について 16 3 18 3 1
問8.教授の再任審査手続き 19 2 16 3 1
問9.教授以外の再任審査手続き 16 9 13 2 1

 おおむね「賛成」が多い様に見えますが、「分からない」がほぼ同数あるのが目を引きます。「評価がどういうものかまだはっきりしていない」「再任の可否の判定の基準が明らかにされていない」という意見に見られるように、この「内規」がどのように運用されるのかがまだ明らかでない事が、賛成・反対の判断をしにくくしていると考えられます。また、「発生研の教官が納得しているかが重要」という意見は、当事者の発生研教員の意見が分からないため賛成・反対の判断ができないという人もいる事を示しています。さらに、「どういう主旨でこの様な内規の内容になったかが明らかでない」「そもそも何の為に任期制を導入したのかがはっきりしない」など、基本理念が示されないまま事態が進行している事を指摘する意見もありました。

 もう一つ目につくのは「反対」の答えが、問 7, 8 に比べ問 9(教授以外の再任審査手続き)で明らかに多い事です。「反対」の人の自由記述によると、赤煉瓦 No.42でも指摘したように、やはり助教授以下の教官の評価を直属の教授が行うことに対する反対がほとんどでした。問9 では回答のあった 8名の教授は全て「賛成」でしたので、助教授以下の教官に限れば賛成 8、反対9となり反対が上回ります。しかし賛成意見も根強くあるのは、既に教授と健全な信頼関係が築けている場合は第三者に評価されるよりも安心である、また学問の専門性の観点から直属の教授の方が正しい評価ができるとの考えからだと思われます。

 その他に、教授の再任手続き・教授以外の再任手続き両方に共通する反対意見として、再任に教授会の3 分の 2 の賛成が必要なのは厳しすぎるというのが多く、5年の任期であるのに 3年半の業績しか評価されない事に対する疑問も出されています。問 10の自由記述では「教員の流動化は必要だが、全てのポストが任期制で良いのか」「任期制という考えには賛成だが現状では問題がある」「任期制導入に反対。しかし、tenureと非 tenureの両立から考えるべきだ」などの意見があり、教官の中でも任期制に対して多様な考え方のある事が分かります。また、「この内規作成に教授以外の教員の同意は得られていないと思う」「全く私達には知らされていなかった。教授は何も教えてくれない。密室での決定は許されない」「構成員の全く知らない所で決定するのは民主主義ではない」といった、現在の医学部教授会の非民主的体質を指摘する意見も多くありました。

ご協力ありがとうございました

 今回のアンケートにあたり、年度末の忙しい時期に御協力頂いた医学部の教官のみなさまにお礼申し上げます。「任期制は自分たち自身に降りかかってくる問題なので非常に重要な事と認識しているが、業績を上げるために本務にいっそう集中しなければならなくなり、任期制問題についての情報は赤煉瓦だけです」という意見は、多くの医学部の教官に共通する思いでしょう。組合はこの様な意見に応えて行けるよう、いっそう努力していきたいと思います。

 

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