No.44
2004.3.8
熊本大学教職員組合
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“「雇用規則(案)」第7条適用か,第8条適用かは,部局で判断する”
——外国人教師処遇問題をめぐって(3)——

 『赤煉瓦』№36(2004.2.16)№42(2004.3.4)でお伝えした法人化後の外国人教師処遇問題を解決する大きな糸口となる見解が,3月5日に開催された黒髪事業場の「就業規則に関する説明会」の場で示されましたので,その見解と解決の途についてお伝えします。

「説明会」で示された人事労務部会長の見解
 法人化後の外国人教師処遇問題を解決し得る重要な見解は,「就業規則に関する説明会」の質疑応答の際に示されました。「就業規則」の委任規則である「国立大学法人熊本大学職員雇用規則(素案)」(2004年1月26日現在)について,“任期付職員に関して第7条と第8条の二つの規定があるが,教員=教授・助教授・講師・助手に任期制を導入する場合には第8条が適用されると理解してよいか?”という質問が出され,人事課長は“第7条は今年1月に改正・施行された労基法第14条に基づくもの。第8条は「大学教員任期制法」に基づくもの。第8条は教育研究組織を単位に任期制を導入するものであり,第8条が適用できない場合などに第7条を適用する。第7条適用か,第8条適用かは,臨機応変に判断する”と答えました。

「国立大学法人熊本大学職員雇用規則(素案)」(2004年1月26日現在)の規定は次の通りです。
(任期付職員)
第7条 学長は,本学の管理運営上又は教育研究上必要と認める場合は,労基法第14条の規定に基づき、任期を定めて職員を採用することができる。
第8条 学長は,大学の教員等の任期に関する法律(平成9年法律第82号)に基づき,任期を定めて教授,助教授,講師,及び助手(以下「教授等」という。)を採用することができる。
2 前項の任期は,国立大学法人熊本大学教員の任期に関する規則の定めるところによる。

 ①「大学教員任期制法」に基づく任期制導入は,教育研究組織(学部・研究科・学科・専攻・講座・研究部門など)を単位に一律に行なうものではなく,各教育研究組織で任期制に適合する専門性の職=ポストを指定して行なうのが文部科学省を含む本来の法解釈であること,②労基法第14条が改正されたとはいえ,法人化後も教員の任期制導入は「大学教員任期制法」に基づいて行なうのが大学の責任を果たす途であることは,すでに『赤煉瓦』№36№42で明らかにした通りです。人事課長が相も変わらず曲解・誤解と不適切な見解をもっていることを明示した答弁ですが,我われ熊本大学教職員組合の見解は『赤煉瓦』№36№42の通りですので,ここでは触れません。
 肝心なのは,続いて行われた質疑応答です。“では第7条=労基法第14条を適用するか,第8条=「大学教員任期制法」を適用するかは,どこの機関で決定するのか? 法人制度設計委員会『国立大学法人熊本大学の制度設計(三次案)』の人事労務部会報告に,「任期制の導入については,各学部等において検討し,任期制が有効な教育研究組織について導入することができる」(18頁)とあることからすれば,第7条適用か第8条適用かも各部局において審議し判断するということになるのか? 人事労務部会長にお答えいただきたい”という質問に対し,人事労務部会長は次のように答えました。

第7条を適用するか,第8条を適用するかは,各部局で検討し,最終的には企画・経営会議で承認を得ることになるが,企画・経営会議は各部局での判断を承認するものとなる。

 さらに“各部局で判断するということで,間違いありませんね”という確認に対しても,人事労務部会長は“各部局で判断する”と明言しました。人事労務部会長が示したこの見解は,第7条適用・第8条適用いずれの場合であっても,任期制導入の適否は各教育研究組織の教育研究の特性に関わるものですから,大学人の見識を発揮したものです。

外国人教師処遇問題を解決する途は明らか!!
 「就業規則に関する説明会」で明示された法人制度設計委員会人事労務部会長(法人化後の人事労務担当理事予定者)の見解は,法人化の外国人教師処遇をめぐって残る重要問題——現職の外国人教師が退職した後の扱いを,労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条を適用した任期付き教員(3年任期の有期労働契約の常勤教員=助教授または講師。再任は2回に限り可)とするか否かという問題——を解決する大きな糸口です。労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条を適用するか,「大学教員任期制法」・「雇用規則(案)」第8条を適用するかは各部局の判断によるという見解を踏まえれば,現職の外国人教師が退職した後のポストを「雇用規則(案)」の第7条と第8条のどちらを適用するかも,そのポストの人事を進める部局の判断によることになります。問題は,その人事を進める部局の判断次第というわけです。
 そもそも,なぜ現職の外国人教師が退職した後の扱いについては,ポストを配置される部局の審議を経ることなく,運営会議・評議会レヴェルのみで「決定」したのでしょうか(適用される法律の説明もないままに)。2月26日の評議会では,現在任期付きで任用されている外国人教員(外国人教師とは異なります)を法人化後は任期の定めのない雇用にすることが決定されましたが,それは所属の部局の判断を踏まえて行なわれています。外国人教師のポストについてのみ評議会レヴェルで決定したのは,「学長が全学的な雇用枠(定員)として管理するもの」であるためというのかもしれません。確かに,外国人教師のポスト(雇用枠)は学長の全学的な管理に置かれますが,運用は配置される部局に任されており,業務内容の細部も部局と本人との協議に任されているのですから,部局の判断を排除する理由にはならないはずです。
 また,人事労務部会長の見解は法人化後の運用に関するものであり,法人化前に準備したものには該当しないといった言い分も許されないはずです。法人化後の運用に関する問題である以上,現職の外国人教師が退職した後の扱いについても,人事労務部会長の見解が適用されて然るべきです。

残る課題は一つ!!
 以上見たように,法人化後の教員の任期制導入にあたって,労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条を適用するか,「大学教員任期制法」・「雇用規則(案)」第8条を適用するかは,部局の判断に委ねられているとのことです。であるならば,現職の外国人教師が退職した後の扱いを労基法第14条・「雇用規則(案)」第7条適用とするか,「大学教員任期制法」・「雇用規則(案)」第8条適用とするかという問題も,そのポスト(雇用枠)を配置された部局の判断に委ねられて当然です。
 現職の外国人教師の2名が今年度限りで退職し,後任人事を進める必要がある部局では,「仮に法人化後,外国人教師のポストを任期制とする場合には,『大学教員任期制法』に基づくものとするよう,強く要望いたします」という要望書が教授会構成員の過半数を大幅に越える賛同を得て部局長に提出されています。
 解決の途は明らかです。残る課題は,大学当局と評議会が大学の自主性と良識を恢復するだけです。 

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