2007.3.26 |
||
E-mail:ku-kyoso@union.kumamoto-u.ac.jp |
使用者が給与交渉を一方的に打ち切る! —「不誠実」を通り越した 熊大使用者の「デタラメ」ぶり— 団体交渉報告・その6 |
その後、組合の要求によって開催された3月20日の団交において、森人事・労務担当理事は交渉継続を要求する組合に対して、給与交渉は「終結」だと一方的に言い、その後、3月26日の役員会は、不利益を放置したまま特別都市手当を拡充し広域異動手当を新設するという就業規則改定を強行しました。ここでは3月15日から20日までの経緯、ことに3月20日団交の詳細を報告します。 組合役員を電話で呼びつけ、交渉の実質終結を宣告した人事・労務担当理事と総務部長 3月15日(木)の午前9時40分頃、仲地人事課長は組合書記長の研究室に電話し、突然、「3月8日の団交における組合の要求3点及び学長の団交出席問題に関して本日の午前11時から回答することになっているので、人事課に来て欲しい」と伝えてきました。組合執行委員長に森人事・労務担当理事から電話が入ったのも10時過ぎでした。「本日の午前11時から回答することになっている」というのは、森人事・労務担当理事や本田総務部長ら、組合との交渉窓口となっている人々の一方的な都合による日程に過ぎません。この日程がいつ決まったかは定かではありませんが、彼らは前日まで委員長・書記長(出張等で多忙でした)と連絡が取れなかったといいます。それなら、専従の書記がいる組合事務所に連絡すればよい筈です。それをせずに、当日の朝になって相手に押し付けるなど、社会的にも通用しない失礼極まりない行為です。 しかし、事が給与問題であるために、執行委員長・書記長はその後の予定をキャンセルし、書記局員1名とともに、11時15分から使用者側との会談に応じました。使用者側の出席者は森人事・労務担当理事、本田総務部長、仲地人事課長、片山人事課副課長、新人事課係長でした。そこで使用者側は、次の学長名の文書(以下「学長文書」)を組合側に交付しました。後に示すようにこの文書は、何一つとして給与交渉を進展させない、給与交渉を進める態度が使用者側には全く無いということを学長名で示したものであり、しかも、団交での組合の指摘について無視している部分さえあるものです。
組合はこの文書の交付は団交決裂を意味するものではなく、あくまで継続中の給与交渉に関する使用者側からの情報提供であると主張しました。森理事はこれを確認しましたが、いきなり「団交を開催するとしたら、年度内はもう本日の夕方しか時間がない」と言い、さらに本田総務部長はその場で、「給与交渉をこれ以上継続する客観的必要性は無い」と発言しました。 森人事・労務担当理事、本田総務部長、仲地人事課長らは、組合役員をその日の朝に電話で呼びつけ、昼前には交渉の実質終結を宣告したわけです。組合は、当日の団交開催は準備時間が確保できないことを理由に断り、午後1時過ぎに執行委員長・書記長が人事課に出向き、あらためて文書で年度内の団体交渉開催を要求しました。この時、片山人事課副課長は学長宛の組合文書を受け取るそばから「(年度内開催は)多分無理ですね」と発言し、交渉拒否の態度をあからさまに示しました。 給与交渉の基礎データは年度内には示せないが、3月26日の役員会で給与改定する ところが使用者側は15日の午後には態度をころりと変え、3月19日か20日の午後3時以降なら団交の時間が取れる、と伝えてきました。急に時間が取れるようになった理由は説明されませんでしたが、ともかく、3月20日15時30分から、さきの学長文書をめぐって団体交渉を開催しました。出席者は組合側が四役・執行委員・書記局員・書記合わせて12名、使用者側が森人事・労務担当理事、本田総務部長、仲地人事課長、片山人事課副課長、それに人事課係長4名、人事課主任1名、人事課職員1名でした。 まず学長文書2の不利益緩和について。使用者側には組合が具体的に示した要求に対して具体的な根拠を示して交渉する義務があります。しかし学長文書は組合が要求した賃金切り下げの2007年度における人件費への影響額さえ示さずに、不利益緩和要求を拒否しています。森理事と本田総務部長は、3月8日の団交と同様に今回の団交においても「2006年度の決算が出ないと2007年度影響額は示せない」と強弁して数値提示を拒絶しました。『赤煉瓦』№36(2007年3月14日)でもお伝えしたように、2006年度決算と組合要求のデータとはまったく関係が無く、この拒絶理由は不当なものです。 さらに、交渉の基礎となるデータさえ出さないのは誠実交渉義務違反だと組合側が糺すと、本田部長は、 データは4月以降の決算時に出すので年度内には示せないが、今年度の給与改定は3月26日の役員会で決定する。と言い放ちました。交渉の基礎となるデータは4月以降にしか出さないのに、ゼロ回答の給与改定を3月中に行うというデタラメぶりには呆れるばかりです。合理的根拠を示さずにゼロ回答することは明らかな誠実交渉義務違反=不当労働行為であり、熊大使用者はそれを確信犯的に行っていることも明らかです。 学長の考えは伺っていないが、文書の行間を読めば分かる そればかりではありません。学長文書2の末尾には、「厳しい人件費削減の中で、仮に余剰金が出たとしても、中期計画の実現に向けた取り組みに充てたいと考えております」とあります。ここでの「中期計画の実現」とは、文脈上、平成21年度までの人件費4%削減としか読めませんから、毎年累積してゆく賃金切り下げ分の余剰金を教職員の労働条件に還元する意思は学長にはまったく無いということになります。しかしこれは昨年度の団体交渉における「賃金削減によって生じる財源は教職員のインセンティブに使いたい」という学長の発言と矛盾します。組合は、学長は考えを変えたのかと糺しましたが、団体交渉に当たっては学長から「権限を委任」されている筈の森人事・労務担当理事(学長文書1)は、その件については学長の考えを聞いていない、と繰り返すばかりで、答えることが出来ず、ついには、 学長の考えは文書の行間を読んでいただければお分かりいただけると思う。と言い出す始末でした。これでは交渉になりません。 組合が「学長からの委任」の具体的内容について糺すと、森理事は団体交渉事項に関する決定権を委任されているわけではないことを認めました。 岩手大学の事例は失念したので学長には伝えていない 助教の処遇について、3月8日の交渉において組合は、岩手大学が学部の授業担当にも手当を支給する方針であることを森人事・労務担当理事に伝え、そうした他大学の動向も踏まえて検討するよう求めていました。 ところが、学長文書3ではそのことが無視され、あたかも学部授業担当の手当支給を検討している大学すら皆無であるかのような記述がなされています。組合が提供した岩手大学の例について調査し学長に伝えたのかと糺すと、森理事は、 多忙で失念したので、調査しておらず、学長にも伝えていない。と述べました。森理事は以前の団体交渉において、助教の授業担当手当について他大学の情報を検討の参考としたいのでぜひ組合から提供して欲しいと要望していました。だから組合は岩手大学等の事例を団交の場で提供したのです。にもかかわらず、森理事はこの提供情報を放置し、実質決定権を有する学長にそれを伝えもせず、しかしこの学長文書を作成し組合に押し付けたのです。人事・労務担当理事の職務怠慢としか言いようがありません。いったい組合の要求やその根拠がどれほど学長に伝わっているのか、極めて疑わしい状況です。 学長の考えには合理性があると思う 学長文書4の広域異動手当が合理的であると使用者側が判断した理由については、3月8日の団交で使用者側が示した理由とまったく同じことが書かれてあり、組合の主張に答える内容にはなっていません。「精神的負担」という抽象的な理由をあげるだけで、60kmの異動がどういう理由で手当3%に相当し、300kmの異動が6%に相当するのか合理的根拠を示していません。しかも、広域異動手当の支給対象者が「人事交流職員」すなわち国立大学法人や国の機関からの異動者に限られるという差別性については、組合の主張を無視し、一切触れていません。しかし熊本大学の役員給与規則は、役員に関してだけは「人事交流職員」の枠を適用せず、民間出身の者にも特別都市手当や広域異動手当が支給できることになっています。このような役員厚遇の規則を設けているのは国立大学法人のうちでも熊本大学だけのようです。 このように、移動距離と手当額の関係、支給対象の差別性と役員厚遇の実態など、組合が指摘する問題点に関して合理性のかけらも示していない学長文書4の内容について、森人事・労務担当理事は、 学長の考えには合理性があると思う。と述べ、合理性の根拠を示さずに合理的だと主張するという理解不能な答弁をし、さらに組合が役員厚遇の制度実態について糺すと、 合理的でないもの、クエスチョンが付くものはあるかもしれない。どうするかは今後の課題になると認識している。と述べて、ついに、異動保障に関する現行制度の問題点を認めた発言をしました。森理事はこの認識を学長にしっかり伝え、組合の提言(『赤煉瓦』№37、2007年3月14日)を踏まえて早急に是正の検討を開始すべきです。 熊大使用者は誠実交渉義務を果たし、一般教職員の不利益緩和をはかれ このように使用者側は、賃金交渉に関する決定権を持たない理事が団体交渉を担当し、賃金交渉の基礎資料の提示も拒絶し続け、交渉で組合が提供した情報を無視し、組合の根拠ある要求を放置した挙句に一片の文書でもって交渉を打ち切ろうとし、結果として2006年4月から一般教職員が被っている労働条件上の甚大な不利益を放置したまま、役員やごく一部の役職員=人事交流職員だけをますます厚遇する異動保障制度を導入する役員会決定を行いました。 「社長に伝えておく」等として何一つ交渉が進展しない、実際上交渉権限のない者による形ばかりの交渉態度や、賃上げ交渉に際して決定権限のない者を交渉担当者としゼロ回答することは不誠実な団体交渉とされています(80年12月大阪特殊精密工業事件での大阪地裁判決など)。熊本大学使用者の交渉態度は明らかに誠実交渉義務違反=不当労働行為にあたります。また、交渉の基礎となるデータの提示を拒絶するのは、実質的な団体交渉の実現可能性を封印する行為であり、組合はこのようなデタラメを断じて許すことはできません。 熊本大学教職員組合は、熊大使用者に誠実交渉義務を自覚させ、不利益緩和を実現するために、活動を粘り強く継続してゆきます。 |