2008.9.22 |
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—「国際化推進」構想の真相— |
「全学の国際化推進の仕組みについて(案)」(以下、「国際化案」)に関わる学長・役員会の専断的・恣意的大学運営について、組合はこれまでもニュースや団体交渉等を通じて批判を重ね、5月に発表した声明において、その問題点をあらためて指摘しました。その後、国際化に関係する事項は全学会議の議題に上ることも、報告として取り上げられることも無く、計画はあたかも頓挫したかのように見えましたが、国際化案は決して廃案になったわけではありません。それどころか、今年もまた私たち教職員には一切知らされぬまま概算要求(特別教育研究経費)に盛り込まれ、来年1月の実施に向けて着々と準備が進められている事が一部の学部の教授会等の報告を通じて明らかになってきました。 このニュースでは、7月14日に開催された第3回国際化推進検討WG(以下、「国際化WG」)会議と、文学部・工学部・自然科学研究科長を対象に9月3日に行われた学長による説明会の内容と、その前後の経緯を報告し、依然として改善の見られない学長・役員会の専断的姿勢に批判を加えることにします。 意向に反した合意の捏造 『声明 専断的かつ恣意的な大学運営に抗議する.国際化推進センター問題をめぐって.』(2008年5月15日)において組合が批判を加えたのは国際化案の内容そのものではなく、案の審議、および予算請求に際する意志決定手続きの異常さでした。具体的には、改組の対象となる組織、および移籍等で改組の影響の及ぶ部局等の意向を無視した審議と、教学に関わる重要事項であるにもかかわらず教育研究評議会の議を経ずして改組に踏み切ろうとした事実が批判の主な対象です。これらの指摘について学長が誤った認識を有していることは、赤煉瓦No.2(2008年8月6日)でもお伝えしたところですが、この度明らかになった情報によると、少なくとも形式的には、留学生センターの教員を対象にした説明の機会はこれまでに幾度かもたれていたようです。 学長自らが2度目の説明に臨んだ6月25日の話し合いにおいて、センター教員は改組の必要性を認めたうえで、移籍先となる組織の構成について明確な反対意見を示しました。具体的には、センター教員らが従来行ってきた留学生教育を業務とする教育部門を、海外への留学者へのサポートを業務とする支援部門から明確に切り離すことが最大の要求点でした。しかしながら、7月14日に開催された第3回国際化WG会議に提示された国際化案にセンター教員の意見は全く反映されておらず、さらに驚くべき事に、留学生センター長からはセンター教員の同意を得ている旨の発言がなされています。この会議の結果を知らされたセンター教員が、8月5日に開催された阪口副学長による説明会の場で、改めて組織案に対する反対意見を提出したところ、同意を得ているものと思いこんでいた副学長は驚きを隠せなかったということです。幸い、後述の9月3日に行われた3学部長等を対象とした説明の場に提示された最新の国際化案にはセンター教員の要望が反映される結果となりましたが、当事者の意向に対する配慮の不十分さを非難されたとしてもしかたがないでしょう。6月25日に学長宛に手渡された反対意見はいったいどこで、誰によって握りつぶされたのでしょうか。 「既に文科省に出しているので反対してもらっては困る。」 声明での批判を繰り返すまでもなく、改組を必然的に伴う予算申請を教育研究評議会の議を経ずして行うことは許されるべきことではありません。このことについては3月17日の交渉において人事労務担当理事自身も認めており、昨年度7月15日に行われた特別教育研究経費の要求に際して評議会の審議を得なかったのは、「戦略的・迅速な対応が求められる」状況にあったからだと述べています。法人化後の国立大学には迅速な意志決定が求められる局面があることは事実でしょうし、組合もこのこと自体を否定はしていません。しかしながら、ここで言う「迅速な対応が求められる状況」が、はたして1年間も続くものなのでしょうか。7月14日の第3回国際化WG会議では、「21年度概算要求(特別教育研究経費)の内容をどこまで反映させるか」が今後の検討課題の筆頭に挙げられています。つまり、昨年7月の概算要求以来1年もの検討期間があったにもかかわらず、今年もまた学内の審議手続きを一切無視したまま、昨年とほぼ同じ内容の予算請求が行われたということなのです。 学長は、9月3日に文学部長・工学部長・自然科学研究科長の3者を招き、国際化案について説明すると共に、同案を実施するための兼務教員の拠出を要請しました。その席上で、学長は同案について「既に文科省に提出しているので、反対してもらっては困る。」と発言し、議論の余地を否定しました。 そもそも、この説明の場に3学部等の長のみが招かれたことについて不審に思われる方もおられると思います。その理由は、国際化推進センターの国際交流支援部門に配属予定の専任あるいは兼務教員3名は、現留学生担当教員をもって当てることが国際化案に盛り込まれていたからに他なりません。 学長の要請に対し、ある部局からは兼務教員の人選は慎重に行う必要があるとの考えが示され、またある部局からは、そもそも留学生担当教員というポスト自体すでに学長手持ちの全学流用定員ポストとして返上済みであるという事実がありのままに述べられると、これを受けた学長は、必ずしも現留学生担当教員でなくても良いので、各々1名の兼務教員を拠出し、改組の実現に向けて協力するようあらためて要望したとのことです。このことからも、概算要求に盛られた国際化案が事実誤認と不確かな見通しに基づいて策定された極めて無責任な計画であることが計り知れます。 第2回国際化WGにおける以前の案では、教育研究評議会が改組後のセンターに関わる人事案件の確定後に設定されており、同会議の審議の重要性を事実上無視する姿勢が明確に示されていましたが、9月17日に全部局等の長宛てに最新の国際化案が配布され、そこに記載された検討スケジュールによると、この点を改め、9月25日と10月23日の評議会の議を経た後に役員会で改組を決定し、その後人事案件を確定するという手続きが取られることになっています。なお、10月23日の評議会には、政策調整会議によって各学部等からの意見を反映させた国際化案が再提出される予定ではありますが、独断による予算申請の事後承認を求めようとする姿勢には昨年度と一切変わりありません。 交付金大幅減をよそに資金投入 赤煉瓦No.2でもお知らせしたように、7月29日の閣議決定により国立大学の交付金の大幅削減が確定的になり、熊本大学の場合、その影響は3億6千万にも上ります。その一方で、全国の国公私立大学はこぞって国際化というキーワードを掲げ、留学生の確保に向けた競争に乗り出しており、この領域は既に容易に十分なシェアが期待される市場ではないことは明らかです。 このように、収支の見通しが不確かな状況で、学長および国際化WGは、人件費等の増大するコストには目を向けることなく、闇雲に案の実現を目指しているように思われます。9月3日の国際化案によると、国際化推進センターの設置に伴い、センター自体の管理運営費等の他に、数が明らかにされているだけでも11名の任期付き専門職員を含む新規採用が計画されており、これに加えて、国際語学部門では外国人教員の新規採用さえ予定されています。各学部等では定員削減、非常勤予算の縮小によって教職員の負担が限界に達する危機的な状況を迎える中で、採算の見通しも立たない新規事業への予算投入が許されるはずはありません。 概算要求が認められれば、収支の目処は付くと考える向きもあるかもしれませんが、国際化案には、「なお、現在要求中の特別教育研究経費が認められない場合やその要求額が減額された場合、外部資金の獲得を目指すほか、機構及びセンターの運営経費について別途要求する」と、予算が認められない場合にも計画を実施に移そうとする強硬な姿勢が示されています。3億6千万の減額で管理運営費、教育研究経費がこれまでにも増して縮小し危機に瀕する各学部等に対し、人員の拠出を要求し、さらにセンター設置・運営のための多額の資金を奪い取るだけの価値が、はたして本当にこの国際化案にあると言うのでしょうか。 学長の意見集約依頼の締め切りは10月8日とされていますが、学部長等が教職員の意見を代弁することの許される機会は僅か2回の評議会の場に限定されますので、いくつかの学部では9月25日の教育研究評議会に照準を合わせて意見の集約を急いでいるところです。これほど重要な案件に対して僅か数週間の検討の余地しか与えないことも含め、学長・役員会の専断的・恣意的な大学運営に対し皆さんの批判の声を集中させましょう。 |