No.11
2009.8.27
熊本大学教職員組合
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特定有期雇用職員の雇用期限問題で
団体交渉を行いました
使用者は組合の質問・提案に
何ら合理的な回答をできずーー再交渉へ

  組合は、特定有期雇用職員の雇用期限の問題を今年度の最重要課題の一つとして位置づけています。『赤煉瓦』2(2009.7.17)で総合企画会議で承認された人事制度改革検討WGの「見直し案」の内容を紹介し、『赤煉瓦』4(2009.7.22)で当事者である特定有期雇用職員を対象にした組合アンケートの結果を紹介するとともに、「見直し案」が人材確保策にはつながらないことを主張しました。7月30日の組合定期大会では「特定有期雇用職員の雇用期限「見直し案」の再検討を求める特別決議」を採択し、『赤煉瓦』6(2009.7.31)でその全文を紹介しました。これらは、総合企画会議が「見直し案」を承認しつつも、今後の扱いを学長・理事に一任していること、7月7日の学長懇談において示された“当事者の意向を踏まえて最終的な方針を決める”との学長の発言を踏まえてのことです。
  しかし、8月5日の団体交渉で使用者側が示した案は「見直し案」の内容とまったく変わらないものでした。今回のニュースでは、団体交渉での議論のポイントを紹介します。

組合のアンケート結果に「安心」する理事!? 使用者は本当に病院経営の将来を見据えて対応しているのか?
  まず、使用者側として「見直し案」に対する当事者の受け止め方をどのように確認するのか質しました。これに対し、理事は「組合が行ったアンケート結果は当事者の意向を反映したものと受け止め、組合のアンケート結果も参考に最終案をまとめた」と回答しました。議論の中では「見直し案の条件では契約しないが4人に1人でちょっと安心した」という驚くべき発言もしています。組合は『赤煉瓦』4で「契約する」がわずか18%しかいないことを問題にしましたが、理事は正反対に「契約しない」が22%に止まったことに「安心した」わけです。
  しかし、分からないと回答した6割の人はどのように考えているのでしょうか。アンケートの項目3では正職員になる期待と契約更新の意思を尋ねましたが、「正職員になる可能性が示されていなくても契約する」と回答した方はわずか5%に過ぎません。正職員への道をどのように示すかが重要ですが「見直し案」はその点にまったく答えていません。
  これでは、せっかく技術を身につけた職員が他の病院に移ったり、優秀な人を採ろうとしてもなかなか応募者が集まらないという現状を改善することはできないでしょう。地域における高度先進医療機関の機能に深刻な影響を与えます。「安心した」という発言には病院のおかれている深刻な状況を直視していないのではないかと危惧せざるをえません。

正職員化できない理由は本人の資質ではなく大学の都合に過ぎないことが明らかに
  特定有期雇用職員の雇用期限を撤廃できない理由は、退職手当の問題であると明言しました。これは正規職員の数を増やせない理由にもなっています。パートタイム労働法第8条は、職務の内容、人材活用の仕組みが正規職員と同じで実質的に期間の定めのない雇用となるパートタイム労働者に対する、すべての差別的取扱いを禁じています。これによって、退職手当も正職員と同様に扱う義務が生じます。そのため、雇用期限を撤廃できないというのが使用者側の主張です。組合はこの説明を受けて、正職員になれないのは本人の資質ではなく退職金を積み立てたくないとする大学の都合に過ぎないことを確認しましたが、使用者側はこれにまったく反論できませんでした。
  さらに、組合は退職積み立ての試算結果を示すよう求めましたが、理事は「10年たつと4〜5倍の開きが出る」としか答えませんでした。今回の団交での組合の最大の要求は、雇用期限の撤廃です。それができないのであれば、できない根拠を客観的な数字とともに説明する責任があり、このような曖昧な説明では誠実交渉義務を果たせるはずはありません。重ねて資料提出を求めたところ、ようやく理事は「私が考えるときに使った基本的な数字は出す」と約束しました。
  続いて、特定有期雇用職員の業務が「○○業務の補佐」と規定されていることを取り上げ、これは実態と矛盾するので補佐という表現を削除するように求めました。業務が本当に補佐であれば正職員と職務の内容が異なることになり、退職手当を正職員と同等に扱う義務は生じません。理事は実態は補佐ではないことを認めながらも「特定有期は正規に入る前段階なので、規則上差別的表現があるのはやむを得ない」と述べました。しかし、特定有期雇用職員の業務が正規職員と同一であることは、制度導入時の団体交渉(2006.1.25)で使用者側が明確に述べたことです。同一の業務を行っているにもかかわらず、大学の都合で正規職員と異なる待遇を押し付け、それを正当化するために実態とあわない規定を続けようとする熊大使用者の姿勢は、断じて許されるものではありません。
  最後に、組合はパートタイム労働指針において、パートタイム職員の退職手当についても「通常の労働者との均衡等を考慮して定めるよう努めるものとする」とされていることを指摘し、パートタイム職員には退職手当を支給する必要はないとする使用者側の姿勢を批判しました。さらに、法人が人を雇用する以上、退職積立を行うのは当然の責務であることを確認し、退職積立を含めた対応策の検討を求めました。

毎年の評価に特定有期雇用職員は不満を持っている。契約期間を1年から3年に延ばせ!
  有期雇用職員の雇用期間は事業年度内と定められています。その理由を質したところ、理事は「事業年度ごとに財務管理を行うため」という意味不明の回答を行いました。熊大附属病院の業務が年度ごとに大幅に変更されるということはあり得ないのですから、複数年の契約(労基法では原則3年以内と定めています)を結ぶことに業務上の支障は何らないはずです。パートタイム労働指針では、契約の更新に際しては「労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長く定めるよう努める」とされているのですから、3年契約の導入は当然の措置と言えます。組合は改めて契約期間を3年にできないことの説明を求めましたが、理事は何も回答できませんでした。
  組合が3年契約を求めた背景には、毎年の更新時の評価に多くの特定有期雇用職員が不満を持っていることがあります。まったく正職員化の見通しがないのにレポートの提出を求められたり面接が行われたりしている部署があります。ただし理事は「更新時の評価とは通常の評価である」と言明し、評価が負担であるとの組合の主張に疑問を示しました。更新時の評価は毎年の人事評価以上のものを求めていないとの見解が示されたわけですから、今後組合として更新時の特別な評価の廃止に取り組みます。しかし、通常の人事評価のような曖昧なもので正職員化や雇い止めといった雇用の基本的な部分を決定することはできないはずです。理事の主張は、基本的に全員が再雇用され、経験年数の長い者から正職員化されるような運用の必要性を示しています。

何も合理的根拠を示せない使用者
  熊大使用者は組合の質問・提案に明確な回答を示せないままでした。理事は「現在の規則に比べれば格段によくなっている。何とかこの線でやっていこうという要素は無いか」という有様でした。組合は改善であることは認めつつも、組合ニュース等で述べたようにこの「見直し案」は当事者の意向に沿うものではないこと、そして、当事者の要望を踏まえてもっとよりよい案を提案しているのに、それを受け入れられないとする明確な理由が示されていない以上、同意することはできないと主張しました。

交渉権限のあいまいな理事
  今回の「見直し案」には特定有期雇用職員以外の有期雇用職員の雇用期限の問題も含まれています。この案の中に事務補佐員、臨時用務員について「特に継続して雇用する理由が必ずしも明確でない」という文章があります。組合はこの文章を不見識極まりないと批判した上で、重要なのは雇い止めをしなければならない理由であり、業務が継続しているのに何故雇用期限を設定しないといけないのかと質ししました。理事は有期雇用職員の業務は「あくまで臨時的業務であるから」と実態から乖離した回答を平然と行いました。
  しかしながら、有期雇用職員の中に規則改正が無ければこの8月末で雇い止めになる人もいます。組合はこの事情を配慮し、有期雇用職員に関する就業規則の改正を速やかに行うことを認めるとともに、特定有期雇用職員の問題はそれと切り離して再度団体交渉を行うことを申し入れました。
  理事は学長に報告するというのみで明確な回答を示しませんでした。しかし、団体交渉が決着していないことは、使用者側が組合側の要求を受け入れられないとする合理的根拠(退職手当の試算結果、3年の契約を結べない理由、規則上の「補佐」の文言を取れない理由)を示せていないのですから当然のことです。再交渉をするしないを含めて学長の判断を仰ぐという理事の姿勢には、理事の交渉権限そのものに疑問を持たざるを得ません。これは、交渉を人事労務担当理事に委ねた学長の責任にほかなりません。

再交渉に向けて
  さて、8月7日・17日、過半数代表者に対し就業規則変更の説明が行われました。そこでは特定有期雇用職員に関する規則の変更は除かれています。事実として組合の要求を受け入れ、特定有期雇用職員の問題を切り離して規則の変更手続きが行われたことになります。とすれば、当然再交渉が行われるものと予想されます。再交渉の際、使用者側が組合の提案を受け入れないのであれば、その合理的な理由の説明を求めます。さらに、使用者側は退職積み立ての問題を理由にしているのですから、学長あるいは財務担当理事である事務局長の出席を求めます。

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