No.55
2001.4.23
熊本大学教職員組合
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看護補助者削減問題における熊大当局の嘘とごまかし(その1)

 「附属病院だより 経営戦略特集号」第11号(3月1日総務課総務係発行)は、看護補助者(病棟婦)の大幅削減を以下のように説明しています。「この度、文部科学省から配分された配分人数、予算では到底『2:1』看護体制の実現は望めませんでした。実現のためには、いかにして不足の看護職員の経費を捻出するかにあります。すでに12年度から夜間勤務等加算を行うため先行投資をしております。この経費については、文部省に要求しておりましたが認められませんでした。そのため、院内努力により措置した形となりました。今回23名配分されましたが、すでに14名を雇っているのですから、差引9名分しか経費はありません。さらに、文部科学省から配分された経費では、その一人当たりの積算単価が本院の一人当たりの単価より低いことから、23名の看護要員を雇うには不足することが明らかなのです。また、従来から看護業務改善経費は、すでに予算額をかなりオーバーして他の経費を圧迫していますし、病院長裁量経費については、本院の使命である高度先端医療を開発する経費などにその多くを当てています。これらのことから不足分を捻出するための一つの手段として、看護助手業務、病棟婦業務、メッセンジャー業務、清掃業務等の見直しを行うこととしたのです。看護部の協力により『2:1』看護体制の実現にこぎ着けたのです。」
 これは嘘とごまかしで塗り固められた説明であって、私たちは看護補助者の大幅な削減にまったく納得・合意できません。

「2対1看護」が実施できないとすれば
 上記の説明とまったく同様に、病院長交渉においても、病院長自ら文部省からの配分(23人)では「2対1看護」ができないと繰り返し回答しました(『赤煉瓦』44, 45, 46, 47号)。この回答はまったくの嘘とごまかしですし、それどころか当局の意に反して驚くべき事実を語っています。
 1 / 2.5 + 1 / 10 = 1 / 2 です(1 / 2.5 とは患者2.5人に対する1人の看護婦の配置を、1 / 10 とは患者10人に対する1人の看護助手の配置を指します)。この等式は、熊大のように「2.5対1看護‐10対1看護補助」を算定する病院には、患者2人に対して1人の看護要員(看護婦と看護助手)が配置されている(1 / 2)ことを意味しています。したがって、2対1看護に必要な看護婦の最少増員数 = 看護助手数となります。
 昨年度熊大病院の一般病棟には、16人の看護助手が配置されていました。上記の等式が示しているように、2対1看護に必要な看護婦の最低増員数は、看護助手数と同数の16人となります。配分数よりもはるかに少ない16人の看護婦を一般病棟に配置しても、「2対1看護」が実施できないとすれば、熊大当局はこれまで「届出」に反して、「2.5対1看護‐10対1看護補助」を実施していなかったという驚くべき事実を語っています。

「先行投資」はありえたとしても8名
 熊大当局はまた「14名を先行投資」したが、文部科学省から配分された23名の増員ではこの「先行投資」を回収できなかったと述べています。14名とは、99年4月の増員数(6名)と00年4月の増員数(5名)、同10月の増員数(3名)の合計です。しかし、「先行投資」先の「2対1看護」および「夜間看護加算」とは、病棟の看護体制に他なりません。14名の増員のうち病棟に配置されたのは、8名(00年4月と10月の増員)でした。したがって、「先行投資」がありえたとしても、それは8名にすぎず、14名というのは嘘とごまかしです。                        

そもそもありえなかった「配分」による回収を見込んだ「先行投資」
 文部省は00年10月11日付け通知(「非常勤職員の雇用に係るヒヤリングについて」)によって、「非常勤職員の雇用に係るヒヤリング調書」の提出を各大学に求めました。「調書」は、10月2日現在の定員内外の看護婦数を記載し、これに基づいて、上位の看護体制への移行に必要な看護婦数を記載するように指定しています。したがって、熊大当局が「調書」に記載した一般病棟の看護婦数は、00年10月1日から増員された3名を含む数(私たちの計算では344人)であったはずです。また、この看護婦数に基づいて、「2対1看護」および「夜間看護加算Ia」の算定に必要な増員要求数(38人)が記載されたはずです。
 この「調書」に基づいて、各大学への配分人数・予算が決定されました。つまり、10月2日現在の各大学の看護婦数--熊大の一般病棟では10月1日からの増員を含む344人--を前提として、各大学から要求数が提出され、配分がなされたのです。00年4月1日付および同10月1日付けで採用した定員外看護婦(「先行投資」)を、文部省からの配分によって振り替える(「先行投資」を回収する)という熊大当局の言い分は、そもそもの出発点からしてまったくありえないことだったのです。
 さらに、00年4月1日からの5名の増員は無論のこと、10月1日から3名の増員を行うにあたっても、その時点で熊大当局が「先行投資」の回収を見込んでいたはずがありません。そもそも見込めるはずがないのです。文部省が各大学に増員要求の提出を求めたのが、10月11日--すなわち8名の増員(「先行投資」)のはるか後のこと--なのですから。文部省からの「配分」による回収を見込んで「先行投資」を行ったという説明は、まったくの嘘とごまかしです。
 本当に熊大当局が「先行投資」の回収を見込んで、増員要求を提出したのであれば、「調書」に記載された看護婦数は、当局の言う「先行投資14名」の増員がなされる以前(どんなに遅くとも99年3月末現在)の数値でなければなりません。つまり、熊大当局は、00年10月2日現在の看護婦数を記載するように指定する「調書」の定めをまったく無視して、「調書」を作成した(増員要求を提出した)ということになります。熊大当局は「先行投資」なる言い分によって、ここでもまた驚くべき事実を語っています。

熊大当局は公約を守れ
 熊大当局が99年度以降14名の増員を行ったのは事実です。しかし既述のように、それは文部省からの「配分」による回収を見込んで行われた増員ではありません。熊大当局は、「経営改善(すなわち増収)」による回収を見込んで14名の増員を行ったのです。99年度の6名の増員は、手術件数を増やすため(それによって病床稼働率を引き上げるため)の増員であったはずであり、00年度の8名の増員は、夜勤看護加算を算定するための増員であったはずです。
 この「経営改善(増収)」による増員は、この間の「経営戦略特集号」(第7号、第9号、第11号)が繰り返してきたことであり、熊大当局の「公約」に他なりません。第7号は、「上位看護」(すなわち2対1看護)にともない1憶1,000万の、また「夜間看護」(すなわちIab)にともない1憶1,000万の、計2憶2,000万の増収が見込まれ、この「増収の効果」として「技師・看護婦の増員」が実現するとしています。第9号は、病床稼働率の引き上げと平均在院日数の短縮に「努力すれば必ず報われる」と述べています。第11号は、「各々病院の努力によって円滑で高率な運営を行い、収入効率が高い場合には追加予算の措置によって、さらに人員を増員することが可能となります」と説明しています。
 熊大病院では、00年12月より「夜勤看護加算Iab」が実施され、01年度より「2対1看護」が実施されます。第7号が構想する計2憶2,000万の増収が実現するのです。これに加えて、熊大当局が目指す「I 群入院基本料1」--平均在院日数28日以内の2対1看護--は、「初期加算(入院日数14日以内)」による出来高制の報酬体系であり、熊大当局は出来高による増収--さらなる「努力」によるさらなる増収--を構想しています。こうした「増収の効果」、換言すれば「収入効率の向上にともなう追加予算」は、どこに消えるのでしょうか。増収によって「人員を増員する」ことが熊大当局の公約です。増収が実現するにもかかわらず、人員(看護補助者)を削減することは、明らかに公約破棄です。
 熊大当局が本当に「先行投資」を考えているのであれば、「増収の効果」や「追加予算」による回収を見込んで、少なくとも看護補助者を回復することは十分に可能なはずです。むしろ、看護補助者を回復することが、「I 群入院基本料1」--さらなる在院日数の短縮とそれによる「初期加算」の算定--にとって不可欠の前提であるはずですし、「経営戦略」のひとつのはずです。


 

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