2009.11.26 |
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人件費に充てたいという思いは組合と同様”と 使用者が姿勢を大きく軟化!! ——11月19日団体交渉報告—— |
11月19日,給与引き下げ問題について5回目の団体交渉を行いました。10月1日の労使協議に始まり,2ヶ月弱という短期間にこれだけの団交を重ねたのは,すべての熊本大学教職員の生活に直結した給与引き下げという問題の重要性を使用者側も認識したことを如実に物語っています(これまでの労使協議と4回目までの団交の詳細については,『赤煉瓦』№14,№15,№16,№19,№22をご覧ください)。 今回の団交は,この問題をめぐる最大の山場になるであろうと『赤煉瓦』(№22,2009.11.16)で述べた通り,11月5日の臨時大会決定を受けて組合が提示していた「合意する場合の条件」に対して,熊大使用者側がどのような回答を示すかがすべてを決する局面となりました。ここでは,その内容についてお伝えします。 給与引き下げの合理的根拠は最後まで明示できず!! これまでお伝えしてきたように,人事院勧告に対応した給与引き下げ提案には,法律的にも,現在の熊本大学の財務状況からしても,なんら合理的根拠がないことは,これまでの組合の反論・主張によって明白になっています。使用者側が示した根拠のすべてを組合はすでに論破しています。使用者側に残された「根拠」は,熊本大学だけが給与を引き下げなければ一般社会(国民)の理解は得にくいという,きわめて主観的かつ曖昧なもののみです。これについても組合は,1)国家公務員との比較においても,民間企業との比較においても熊大職員の給与水準は低い,2)職員の給与は熊本大学が独自の判断で決めるべきことである,3)法人化後さらに多忙化が 進んだにもかかわらず,教職員の献身的な努力と貢献によって,熊本大学の第1期中期計画期間の達成度は良好であるという評価も受けており,給与を引き下げなくとも,十分に社会(国民)の理解は得られるはずである,4)むしろ,社会(国民)の理解を得るために努力をするのが大学を管理運営する立場にある者の責務である,と反論してきました。こうした観点に立ち,組合は一貫して今回の給与引き下げ提案の違法性を指摘してきましたし,その考えは現在も変わりません。しかし,使用者側が給与引き下げ提案を撤回する姿勢を見せることは最後までありませんでした。 「合意する場合の条件」に対する使用者の回答 組合は,10月23日の第2回団体交渉で11項目の「不利益緩和措置」を要求しました。また組合は,11月5日に臨時大会を開催し,交渉が決裂し引き下げが強行された場合の運動の具体的あり方を決定するとともに,給与の引き下げによって生じる余剰金約 億円のすべてを人件費として使うことを使用者が認めるのであれば,合意する余地はあるとの判断のもと,「合意する場合の条件」を決定しました。この「合意する場合の条件」は311114 月 日の第 回団体交渉で使用者側に提示しました。これらによって,熊本大学使用者が給与引き下げ提案の違法性を回避できるかどうかは,十分な不利益緩和措置を講ずることができるか否かにかかる状況となりました。 今回の交渉の冒頭において,使用者は組合からの「合意する場合の条件」に回答しました。回答の要旨は次の通りです。 組合が提示した4つの条件はいずれも,合意する場合の最低限の要求です。そのなかでも特に組合が重視しているのは,要求(3)の「給与引き下げによって生じる余剰金をすべて人件費に充てること」です。「福利厚生」という表現は,いかにも職員のための有効な使途のように聞こえます。しかし,“なぜそれを我われの給与引き下げによって生じる余剰金を使って行なわなければならないのか,今年度の財務状況を明らかにしたうえで,納得できる説明をせよ”と組合は迫りました。これに対する使用者側の回答は“年度途中であり,開示できる状況にはない。今年は中期計画の最終年度であり,かりに運営費交付金から余剰金が出れば,政府に吸い上げられることになる。こちらとしても,できるだけ人件費に充てたいが,実態調査が必要なものもあり,また新たな制度を作る場合の時間的制約があり,今年度内の実現は困難である”というものでした。 さらに組合は“要求(3)で具体的に挙げた4つの事項をすべて実行しても,約3億円の余剰金をはるかに下回る金額にしかならない。第2回目の団交時(10月23日)に要求した11項目の「不利益緩和措置」のなかに今年度中に実現可能なものもあるではないか”と強く追及しましたが,使用者側の回答は“時間的に今年度内の実行は無理である”というものでした。そこで,組合は“給与引き下げの合理的根拠も示すことができておらず,また今回の提案に合意することは2005年度の「給与構造の見直し」にともなう引き下げにも実質的に合意することを意味するものである以上,この程度の不利益緩和措置で合意することは絶対にできない”と強く主張しました。この後,使用者側は大きな歩み寄りを見せました。 使用者側が姿勢を大きく軟化!! 使用者側は次のような見解を表明しました。“給与引き下げによって生じる余剰金を人件費に充てたいという思いは組合と同様であり,今年度はやむを得ず福利厚生施設の整備にも充てるが,来年度以降は可能な限り人件費に充ててゆきたい。具体的にどうしたらよいか,今後,組合からも提案して欲しい”。 今年度の扱いの理由については“人件費に充てるにはその根拠と規則の整備が必要であるが,3億円すべてについてそれを行なうのは不可能である。3億円を人件費のみに充てようとすれば,中期計画期間の最終年度であるため,国庫への返納につながりかねないため” と述べました。これに対して組合は,使用者が示す理由を理解するとともに,従来から要求してきた労働条件の改善(特定有期雇用職員の正職員化など)の手がかりを得る機会であることも考慮し,また不利益緩和措置の他の7項目についても組合との協議をふまえて早期実現図ることを条件に,今年度については3億円の一部を人件費以外に充てることを認めました。 さらに組合は,その旨と今後給与引き下げによって生じる余剰金を人件費以外に使用する場合は組合に開示・説明することを明記した「労働協約」の締結を提案し,使用者側も同意しました(新たな「労働協約」は,11月24日に正式に締結しました。その全文はニュースの末尾をご覧ください)。 使用者側の給与引き下げ提案の違法性をあくまでも主張し続け,交渉決裂もやむなしという選択肢もありました。しかし,組合は組合が提示した「合意する場合の条件」に使用者側が実質的にほぼ同意していること,また新たな「労働協約」を結ぶことによって来年度以降の不利益緩和措置の実現にむけて大きな手がかりを得ることができることを重視し,引き下げ提案に合意しました。
注記:この「労働協約」第4条には,組合が提示した「合意する場合の条件」の第4項「2009年10月23日付の要求書が明記する他の不利益緩和措置要求については,今後,熊本大学教職員組合との協議をふまえて,その実現に努めること」が含意されています。 |