No.14
2009.1.13
熊本大学教職員組合
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旧外国人教師の後任ポストは
2009年4月から常勤教員に変更!!
——旧外国人教師の後任ポストの任期制問題,
「五高記念館」准教授の労働条件の改善
に関する団体交渉報告——

 昨年12月16日,旧外国人教師の後任ポストの任期制問題,「五高記念館」准教授の労働条件の改善について,団体交渉を行ないました。今回の交渉は,『赤煉瓦』№12(2008.12.8)でもお伝えした組合の強い要望に使用者側が応え,学長の出席のもとに行なわれました。学長が団体交渉に出席するのは,2006年3月以来,約2年10ヶ月ぶりのことです。ここでは,この団体交渉の内容についてお伝えします。

旧外国人教師の後任ポストの任期制問題について
——2009年4月から労基法第14条適用の任期制を廃止して常勤教員に——
 旧外国人教師の後任ポストを2004年4月の法人化から労働基準法第14条適用=「国立大学法人熊本大学雇用規則」第7条2項=「職員の任期に関する規則」第2条1項適用の任期制
(任期3年,再任は2回に限り可とする任期制で,現在3名の方がこの条件で雇用されています)とした問題に関する組合の主張・要求は次の通りです。
【組合の主張・要求】
旧外国人教師の後任ポストを労基法第14条適用の任期制とするのは明らかな外国人差別であるため,任期制とする場合には「大学の教員等の任期に関する法律」適用の任期制に改めること。

(以下,「大学の教員等の任期に関する法律」は「大学教員任期制法」と略記します)

 この要求に対する使用者の回答は,“旧外国人教師の後任ポストは,2009年4月から労基法第14条適用の任期制を廃止し,常勤教員に切り替える方針で,教育研究評議会・政策調整会議の審議を経て,2009年1月8日の役員会で決定する予定である”というものでした。その理由は,“旧外国人教師の後任ポストが属している部局長から,同じ業務を行なっているのに処遇が異なる(2004年4月の法人化前から外国人教師として任用されていた4名の方には任期制が適用されていません)のは,部局運営に非常に支障をきたすため,任期をはずすことを検討してほしいという要請があったこと”,“「国際化推進センター」の構想のなかで,旧外国人教師の後任ポストの教員にも国際化・留学生の対応に協力を求めていること”,“優秀な人材確保を図ること”にあるといいます。また,これまで旧外国人教師の後任ポストは昇任が准教授までと制約されていましたが,同じく2009年4月からは所属部局の責任で(旧外国人教師の業務を所属部局が維持する限りにおいて)教授昇任を可能とする方針も示されました。
 これらの方針に対して組合は,①“現在,任期が付されている教員3名も2009年4月から常勤教員に切り替えるのか”,②“旧外国人教師の後任ポストにかかわる「雇用規則」第7条2項=「職員の任期に関する規則」第2条1項はどうするのか”,③“昇任の際の基準は所属部局に委ねるのか”を質問し,それぞれ①“常勤教員に切り替える”,②“削除する”,③“所属部局に委ねる”ことを確認しました。
 以上の使用者側の方針を,組合は我われの元来の主張——労基法第14条適用の任期制とするのは明らかな外国人差別であること,旧外国人教師の後任ポストの教員の職務内容からして任期制には適合しないこと,2004年4月の法人化前から外国人教師として任用されていた方と同一の業務を担うにもかかわらず処遇に大きな格差があったこと,全国の国立大学法人で最低の給与水準にあるなかで優秀な人材の確保を図ってゆく必要があること——を受け入れるとともに,「国際化推進センター」の構想のなかでも協力を求めていることから見て,適切な判断をしたものとして評価します。

学長曰く,「私はいっさい知らない」——人事労務担当理事の発言なのに!?
 とはいえ,交渉の過程で使用者側の無責任といわざるを得ない発言も見られました。組合側がこの問題が生じた2003年12月25日の評議会から5年,2004年11月25日の教育研究評議会で学長が陳謝して「見直しを含めて検討する」と表明してから4年以上も費やしたことを追及するなかで,学長は“意志決定については所定の手続きはしっかり踏んでいる”という見解を示しました。しかし、問題が生じた2003年12月25日の評議会において適用する根拠法を提示しないという重大な過失を犯し,その不備を隠そうとするがゆえに「大学教員任期制法」ではなく労基法第14条を適用する根拠を三転させざるを得ないという醜態をさらす破目に陥った
(最終的に示した根拠でさえも事実に反したものであった)ことは,これまで再三にわたって指摘してきた通りです2003年度『赤煉瓦』№36同№42同№442004年度『赤煉瓦』№2同№6№32。追及の過程で,組合から“2004年3月5日の黒髪事業場での「就業規則に関する説明会」で,労基法第14条=「雇用規則」第7条適用か,「大学教員任期制法」=「雇用規則」第8条適用かは部局で判断すると人事労務部会長=法人化後の前大迫人事労務担当理事が公言したが,そのように運用しなかったではないか”と指摘されると,学長は“そのことを私はいっさい知らない”と答える始末でした。人事労務担当理事の就任予定者が教職員に公言した内容(さらに2004年3月29日の団体交渉の場でも使用者が示した見解)を「いっさい知らない」と平然というのには,呆れるばかりです。この発言は,2003年度版『赤煉瓦』№44(2004.3.8)でも学内にお知らせしているのですから(学長は,組合ニュースを読んでいないか,まったく忘却したのかのいずれかなのでしょう)。学長の回答は,当時,学内の管理運営が大きく混乱していたことを如実に物語っています(混乱していたのでなければ,学長が白を切ったものでしかありません)。これに対して組合は,“運営に混乱があったことは事実であり,運営の不備はしっかり反省してほしい”と要望しました。
 ともあれ,使用者が示した旧外国人教師の後任ポストに関する方針は,その後,2009年1月8日の役員会で正式に決定され,1月14日には現職者の方への説明が行なわれます。その規定は末尾に資料として掲載しましたので,ご参照ください。

「五高記念館」准教授の労働条件の改善について
 「五高記念館」准教授の労働条件の改善に関する組合の主張・要求は次の通りです。
【組合の主張・要求】
「五高記念館」准教授ポストは,「五高記念館」の企画・運営のほか,学芸員課程教育,学部の必修科目の教育,大学院教育といった極めて継続性が求められる業務を担っている。この業務内容には任期制は適さないため,再任審査に際して任期制を廃止し,常勤教員に切り替えてほしい。
 これに対する使用者の回答は,“「学内共同教育研究施設等の人事に関する委員会(五高記念館)(以下,「人事委員会」と略記します)で決定したことであり,任期制を変更するつもりは今のところない”というものでした。
 組合は,そもそも「五高記念館」准教授ポストの任期制の導入手続きについても,2006年6月22日の「人事委員会」において任期制の適否を一切審議していない,それどころか「大学教員任期制法」のどの条項を適用するかさえも審議していないという重大な不備があったことを指摘し,このポストを任期制とした理由を尋ねました。これに対して使用者は,“「大学教員任期制法」の第4条1項
(「先端的,学際的又は総合的な教育研究」など「多様な人材が特に求められる」職)を適用するのは当然であるため,適用条項は議論していない”と答えました。しかし,この回答はまったく事実に反します。組合からの批判2006年度『赤煉瓦』№7,2006.7.13)を受けた後の同年10月12日の「人事委員会」になって「大学教員任期制法」の第4条1項を適用することを決めているからです。組合は,このことを指摘したうえで,学芸員課程を担当する教員たちからは常勤教員とするよう強い要望が出されていたにもかかわらず,その要望を排除して任期制とした理由を尋ねました。その回答は驚くべきものでした。使用者は“そうした要望は知りません”というのです。学芸員課程担当教員からの要望文書は,『熊本大学ユニバーシティ・ミュージアム構想 第1期五ヵ年計画』に収録されています。それを平然と“知りません”というのですから,何と無責任,もしくは無知な使用者・管理者と評するほかありません。組合はこのことを指摘するとともに,ある部局の前部局長が教授会構成員に報告したメール文書の実物を明示して,学芸員課程担当教員から強い要望が出されていたことを確認し,任期制とした理由を改めて尋ねました。使用者側は“業務内容に照らして,多様な人材が求められると人事委員会で判断した”と回答するのみです。
 また,「人事委員会」での判断にのみ基づいた使用者の発言は,「人事委員会」の「決定」を勝手に決定とみなし,教育研究評議会の審議と正式決定を経ることなく教員公募を行なった過ちを何ら省みないものであり,教育研究評議会の審議を軽視している使用者の悪しき体質を如実に物語っています。
 組合は,“「五高記念館」准教授の業務内容は,「五高記念館」の企画・運営のほか,広範な教育業務,学外の実習先との信頼関係の構築にもわたっており,今後はさらに学外との連携を図る業務が増える可能性が高い。こうした業務を担うポストで人がコロコロと変わるのは相応しくない。明らかに任期制には適さないポストである。この間,熊本大学では,総合情報基盤センターから社会文化科学研究科への配置換え,留学生センターの「国際化推進センター」への改組に見られるように,主に教育業務を担うポストは任期制としない判断をしている。先に交渉した旧外国人教師の後任ポストの今後の扱いについても同様である。とすれば,「五高記念館」准教授のポストについても,業務内容に照らして任期制を廃止することを検討して然るべきではないか。現学長のもとで生じた問題であるので,再任審査に際して任期制から常勤教員に切り替えることを検討し,次期学長に申し送ってほしい”と主張しました。これに対して使用者は,“多様に人が変わると決めたわけではない。任期を付けただけ。審査によって再任され,業務の継続が可能である”と回答しました。
 組合は,“定年まで無際限に再任を繰り返すのは「大学教員任期制法」の趣旨に反すると政府・文部科学省も明言している。再任の上限を設けず,再任を繰り返すことで業務の継続が図れるというのは誤魔化し以外の何ものでもない。キチンと自分の業務を果たしているのにもかかわらず,任期を付けられつづける人間の不安感を一体どのように考えているのか”,“学芸員課程担当教員からの要望を排除して任期制とした理由を尋ねているが,具体的な理由はまったく示されていない”と追及しました。これに対して学長はうつむいたまま“私の任期中に見直す気持ちはない。その必要はない”と答えるだけでした。
 組合は,“この団体交渉で示した組合の見解を踏まえて問題解決の方向性を検討し,現学長の任期中に再度交渉の機会をもち,学長の見解を示すよう”要望しました。
 この交渉では,2008年2月29日で要望した「五高記念館」准教授の他の労働条件の改善
(詳しくは2007年度『赤煉瓦』№28,2008.4.1を参照)にむけての検討状況も確認し,研究費については全学的予算措置以外にユニバーシティ・ミュージアム運営費のなかから20〜30万円程度支出できるように配慮したこと,再任審査の業績評価委員会に「五高記念館」准教授と同じ専門分野の教員と学芸員課程の教員を入れることについては“常識的な判断・自然な考え”であることなどを確認しました。

今後の任期制問題の課題
 以上お伝えしたように,「五高記念館」准教授の任期制の見直しについては使用者が頑迷固陋な態度をとりつづけ
(現学長の任期中に再度交渉の機会をもって学長の見解を示すことについてさえも,ついに学長は首を縦に振りませんでした),残念な結果に終わらざるを得ませんでした。しかし,旧外国人教師の後任ポストの任期制問題については問題発生から5年もの歳月を費やしたものの,問題の解決に至りました。これは,旧外国人教師のポストを労基法第14条適用の任期制とする大学がいくつもあるなかで,全国に先駆けて任期制を撤廃したものです(この悪しき任期制を全国に先駆けて導入したのも熊本大学だったのですが……)。また,その業務の内容,同一業務を担う者との著しい処遇の格差,優秀な人材確保等の問題を考慮して任期制を廃止する点も評価できる判断といえます。
 今回の団体交渉は,本学の今後の任期制問題の課題を浮き彫りにしたものでもありました。旧外国人教師の後任ポストの任期制を廃止した大きな理由の一つである同一の業務を担っているのに処遇が異なるのは部局運営に非常に支障をきたすという問題は,2007年3月以前に採用された助教は常勤職員であるにもかかわらず、2007年4月以降採用した助教は任期制としていること
(自然科学研究科の8ポスト,総合情報基盤センターの2ポスト)にも共通したものです。また,政府・文部科学省が否定した定年まで無際限に再任を可能とする任期制(「大学教員任期制法」の趣旨にも反した,いわばインチキ任期制)を導入している使用者側の安直な認識ぶりも改めて明らかになりました。これこそが,安易に任期制の導入を図ろうとする元凶にほかなりません。
 熊本大学教職員組合は,今後も「五高記念館」准教授の任期制をはじめ,不備のある任期制問題の解決にむけて粘り強く運動してゆきます。と同時に,使用者に対して,学長が団体交渉の際に示した認識を改め,「五高記念館」准教授の任期制の見直しを検討し,任期中に再度交渉の機会をもって自身の見解を示すことを重ねて要望するものです。

【資 料】

旧外国人教師枠で雇用している教員の取扱いについて(案)

 平成16年2月26日開催の評議会において決定された、「現在の外国人教師等の法人化後における取扱いについて」を廃止し、平成21年4月1日以降の取扱いを次のとおりとする。
  1. 現在本学が保有している旧外国人教師(以下「ネイティブ語学教員」という。)7名の雇用枠については、学長が全学的な雇用枠(准教授定数)として管理しているが、現にネイティブ語学教員を配置している部局において運用するものとする。
     ただし、この雇用枠(准教授定数)は、部局における全学定数運用のための留保定数又は部局割当の欠員に充てることはできないものとする。
  2. ネイティブ語学教員は、任期の定めのない常勤教員とする。
  3. ネイティブ語学教員は、ネイティブ語学教員としての雇用枠で雇用することを踏まえ、外国語科目及び専門教育科目を担当させるにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者で、当該外国語を母語とする者のうちから選考するものとする。
  4. ネイティブ語学教員は、高度の専門的学識又は技熊を活かして、外国語科目及び専門教育科目の授業を担当するものとする。 また、学長及び当該部局と当該教員が協議して合意をした場合は、その他の業務を担当させることができるものとする。なお、その場合、評価においては、教育だけではなく、他の教員と同様、研究、社会貢献及び管理運営(部局及び全学の国際化推進に関する業務を含む。)についても対象とする。
  5. 部局の教授定数を用いて、 当該教員をネイティブ語学教員として教授に昇任させた場合、空席となった准教授定数は、当該部局で運用することができるものとする。
     ただし、当該教員が転出・退職等をし、ネイティブ語学教員が不在となった場合は、講師以上のネイティブ語学教員を雇用するものとする。
  6. ネイティブ語学教員が所属する部局の長は、現教員とは言語の異なるネイティブ語学教員の雇用等、ネイティブ語学教員の役割を変更しようとする場合は、学長と協議するものとする。


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